シモーヌ
★★★★
(2002年アメリカ映画)
製作・監督・脚本:アンドリュー・ニコル
出演:アル・パチーノ、レイチェル・ロバーツ、ウィノナ・ライダー、キャサリン・キーナー
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これを一言で言えば、CGで作った女優を観客に本物の女優と信じ込ませる映画。アンドリュー・ニコルの映画は一言で説明できるから面白い。
「シモーヌ」は、予告を見たとき、子供だましの内容になりそうな予感がぷんぷんして、まったく期待していなかったのだが、見てみてびっくり。さすがはアンドリュー・ニコルで、バレちゃうんじゃないかとハラハラさせつつ、人間普遍の風刺たっぷりで、ニコニコしながら心地よい気分で最後まで見ることができた。シモーヌ役のレイチェル・ロバーツも、予告では魅力不足と思っていたが、本編を見てみると、本当に実態がないように演技していて、不思議な魅力がある女優で、僕はいっきにファンになった。本当に完璧な女優に見えてくるのだからよくできたものである。
このシモーヌ。アル・パチーノ演じるタランスキー監督が往年の女優達の特徴を盗んで作ったものである。体はソフィア・ローレン、顔はオードリー・ヘプバーン、物腰はグレース・ケリーに似せている。0と1だけで作った女優なので、人前に出すことはできず、私生活をマスコミにさらさらないというグレタ・ガルボばりの戦術でシモーヌをスターに仕立て上げる。タランスキーがシモーヌを操りながら、「ちょっとメリル・ストリープすぎるな」とつぶやいたり、映画ファンも思わずニヤリとするだろう。
アル・パチーノもこの年にして、この奮闘ぶりはたまらないものがある。タランスキーがマイクを通して喋ったことが、そのままシモーヌの声になる。タランスキーは自我を絵に描いたような人で、自分で自分のことを褒めて、自分を世間に凄い人だと思わせるところがお茶目である。かと思うと、シモーヌに別れた女の特徴をインプットするなど、ロマンチックな一面も見せる。
これの面白いところは、黙っていても勝手に情報が一人歩きしていくことである。タランスキーは巧みにその情報の一人歩きを利用するが、本人でも収拾がつかないほどシモーヌの名声が巨大化していくところがコミカルに描かれている。実際マスコミとはこんなものである。噂が噂を呼ぶし、どこからどこまでが本当かなんてこの世の中ではわかったものじゃない、人間なんて隠さなければいけないことでも喋ってしまうし、ホテルでタランスキー監督が「誰にも喋るな」といえば次の日にはマスコミには筒抜けになっている。シモーヌがCGだと言ったところで、誰も信じようとしない。そういうところが、この映画のリアリティであり、一番面白いところだ。
「ガタカ」に比べると、ハリウッドの商業様式に塗り替えられてしまった感があり、シモーヌが監督に感謝の言葉を言わなくなるシーンなど、一部盛り上がりすぎているところや、不必要と思われる箇所もあるが、その体制の中でもきちんと自分の作家性をアピールしたアンドリュー・ニコルには拍手を送りたい。DVD情報
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