今週のスター

グレタ・ガルボ

No.031
グレタ・ガルボ
Greta Garbo(1905〜1990)

 映画を象徴する伝説のスター

 我々は「スター」という言葉を簡単に使いすぎていたかもしれない。本当の「スター」というのは彼女のような人を言うのだろう。
 ハリウッドが誕生した頃、「映画」というのもが大衆にとってどれだけ魅力的なものに見えたか。何しろ写真が動くのだから、感動して当たり前である。人々は映画に酔いしれ、スターに酔いしれた。グレタ・ガルボはそんな時代を象徴する、サイレント時代の大スターなのである。


 ミステリアスな美貌

 スウェーデン人である彼女は、21歳にしてハリウッド入りし、主演作「イバニエスの激流」で、美しくもミステリアスな演技を見せつけた。僕もこの映画を見たときは、ガルボの美貌に、何だか本当に意識を失いそうな気がしたものだ。
 トーキーになってからも、彼女は伝説的な成功を収めた。サイレント時代の役者のほとんどは、声が訛っており、トーキーの波に押し流されてしまうのが普通であったが、彼女だけは違い、その訛りがかえってたまらないものに聞こえた。最初のトーキー映画「アンナ・クリスティ」の”ガルボ喋る!”のキャッチフレーズは、映画史に残る名文句である。最初のセリフ”ジン・ウィスキーをちょうだい”(訛っているのでそうとは聞こえづらいが)のシーンはさりげなくも歴史的名場面で、彼女の神秘的ハスキーボイスは、大衆を虜にさせた。ハリウッド神話がここに築かれたのである。


 彼女のすることすべてに大衆は熱狂した

 彼女はクールな女優であったが、そのクールさをとどめつつもコメディの「ニノチカ」では初めて笑顔を見せ、世界中が”ガルボが笑う”と大騒ぎ。何をするにしても大衆が大騒ぎするのだから、彼女の存在そのものが当時の文化だったといってよいだろう。
 ところが、彼女はその後まもなく引退。以後死ぬまでの50年間、映画に出演することは決してなかった。華やかに咲いた後、その輝きを保存したまま映画を去った、まさに伝説のスターである。

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