アル・パチーノ

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アル・パチーノ  

 「ゴッドファーザー」(72)で「今までになかったタイプの主人公」と称されて人気スターになった名優である。

 6年前、僕は友達と3人で映画館に「ヒート」(95)を見に行った。おばさんたちが映画を見て喜んでいた。友達が「おばさんもスターの追っかけやるんだね」と言った。しばらくしてもう一人が「でも、アル・パチーノが若い頃、あのおばさんたちも若かったんじゃない?」と言った。一同納得した。
 アル・パチーノは今もすごくかっこいいし、まだまだ若い。でも、20年前もパチーノは確かにハリウッドにいた! 僕らはアル・パチーノを好きになって数年しか経たないけれども、あのおばさんたちは20年間アル・パチーノを追っかけているわけである。20年という長い年月は、まだ二十歳にもなっていなかった僕らには想像もつかなかった。感無量だった。笑われるかもしれないけど、僕らはあのファンの人たちを見て、初めて人間が年を取るということを知ったのだった。
 と、このように書くと主婦の方に失礼かもしれないけど、あの頃僕らは未熟だったというだけです。(なんかパチーノとあまり関係ない話題でスミマセン)

 アル・パチーノ、すごく個性派だと思う。人間くさい役ばかり選んで出てるしね。「スケアクロウ」(73)、「セルピコ」(73)、90年代では「セント・オブ・ウーマン」(92)、「カリートの道」(93)などなど。汚い役、おかしな役がまた余計にかっこいい。芸達者だし、理想的な顔つきをしているし、失敗作がないし、もう何も言うこと無しだぁよ。(なんか投げやりな文でスマンです)

 

名作一本 No.55
「狼たちの午後」
1975年アメリカ映画/シドニー・ルメット監督

 犯罪ドラマは、どれもストーリーがドラマチックすぎる気がしませんか? そう思っているあなたに、とっておきの一本、「狼たちの午後」をご紹介します。
 「狼たちの午後」は他の映画とは違うのです。従来のドラマチックな要素を払拭した作品と言っていいでしょう。本作は、その払拭行為そのものが、作品を更にドラマチックなものにしています。つまり、ドラマチックじゃないことがドラマチックなのです。

 主人公は銀行強盗ですが、ありがちな悪役とはまったく性格が違います。「犯罪者なんてこんなものだ」、そう思わせる人なんです。
 僕がもっとも感心したのは悪役の走り方です。従来の悪役なら、それはもうかっこよく走るところですが、この映画の悪役は、足をツーと滑らせて走るのです。銀行の床にはワックスが塗ってあるので、滑るのは当然なんです。従来の悪役が一人も床を滑らなかったのは、それが絵的にカッコ悪かったからなんです。この映画では、絵的にカッコ悪いことを平気でやっています。悪役本人は大まじめなのですが、映画を見ている観客には滑稽に見えてなりません。これがこの映画のリアリティであり、ユーモアなのです。

 人質だって、ずっとトイレに行かないわけではないのです。お腹も減るので、食事も取らなければなりません。長時間じっとしているわけではないのです。野次馬だって周りにいっぱいいるはずです。銀行にイタズラ電話をかける物好きな人がいてもおかしくないでしょう。このような細かい場面描写は、従来の犯罪ドラマでは余計なものとして無視されていました。「狼たちの午後」はそれを逆に強調させることで、おかしな緊迫感を出すことができたのです。
 とても奇をてらった映画ですが、これこそ本物の犯罪ドラマと言わないわけにはいきません。

 ちなみに、これは実際にあった話です。現実はドラマよりもドラマチックということですね。

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