映画雑誌雑感
スクリーン

 「スクリーン」は50年以上前から多くのコダワリを持つ雑誌だった。しかし、今からちょうど7・8年前から異変が起き始めた。ロゴタイトルが英字になり、本のサイズが大きくなり、表紙が「男優」になったのだ(かつては絶対に「女優」しか表紙を飾らないというコダワリがあったのだが)。それと同時に、邦画のページを無くして、洋画オンリーの雑誌となった。それからますます読者は淘汰されて、一般読者を受け付けないミーハー中心の雑誌になっていった感がある。かつては淀川長治氏の毒舌コラムなど、「キネマ旬報」を意識した読み物としての構成が結構楽しめたものだが、現在はライター達の文章もだいぶ穏やかになってしまった。しかし、映画を予習するための一色印刷のページは、大昔から続けており、さすがの充実ぶりで、有名映画はもちろん、フランスやイタリアの名画から、誰も知らないB級ホラーまで、公開されるすべての映画の粗筋を写真付きで掲載している。原題の意味を日本語表記するというコダワリは昔のままだ。基本コンセプトが見えてこないゴッタ返した内容は相変わらずだが、かえってそれがこの雑誌のいいところである。
 僕は「スクリーン」の魅力は「手作りの味」だと思っている。デジタル社会の今時にかなりアナログな作り方をしており、パソコンを持っていない読者たちにも親切な構成である。読者の投稿コーナーなど、他誌にはない巨大コミュニティを設けているところにも「スクリーン」なりのコダワリがある。また、スター達の写真もいかにも「生写真」っぽい。赤目だったり、ピンボケだったり、フラッシュを真っ正面から焚いたようなスナップ写真ばかりだが、スター達の汗がちゃんと写っているし、いかにも現場の空気を想像させ、スターのそばに立っているかのような気にさせられる。これはミーハーにはたまらないものがあるだろう。

→第10回「DVDビデオぴあ」へ続く

スクリーン

「スクリーン」
近代映画社
毎月21日発行
発行部数9万部
http://www.kindaieigasha.co.jp/

今回取り上げたナンバー
「2004年11月号」770円
表紙/ミラ・ジョヴォヴィッチ

※主な記事
ジョニー・デップ・スペシャル
人気スター夏の総決算
ドキュメンタリーの魅力を再発見しよう
読者の広場

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2004年9月23日