映画雑誌雑感
ムービー・スター

 雑誌の名前から感じた第一印象と、実際に読んでみた内容のギャップに驚いた。ただのミーハー型映画雑誌と思っていたら大間違い。これほど完成された映画雑誌は他になく、「映画雑誌のベストバイ」の称号を授けたいくらいである。もともとは「イン・ロック」の映画版みたいな位置づけであったが、ロック畑のライターたちに、こんなに面白い本を作られてしまうとは、本家映画雑誌は面目丸つぶれではないか。同じロック畑では、ロッキング・オンの「Cut」がライバル誌と言えるが、あちらがルール違反的構成とするなら、こちらは至って古典的な作りで、それでいて記事の内容は的確で奥深い。意外なのは、広告ページが一切ないこと(自社広告はある)。広告収入ゼロにして、560円という安値で、ここまで充実した雑誌ができてしまうとは!
 僕がこの雑誌に感銘を受けるのは、ジャーナリズムとしての姿勢を貫いているからである。ライターたちが自ら現地におもむき、自分なりにリポートすることに本誌の意義がある。例えば、ヴェネチア映画祭の記事だけでも22ページあり、その事細かなルポは、現地の雰囲気を十二分に伝えている。インタビューもじっくり時間をかけており、2ページだけの記事かと思えば、次のページにもまだまだ続いているという充実感がある。1本の映画にかける文章量も他誌よりは多めで、ひとつひとつライターたちが個人収集した情報をもとに丁寧に書かれている。発売日は他誌よりも半月遅れであるが、その情報は他誌よりも半月早い。掲載写真の5割くらいはライター自身が撮影したスナップ写真だが、それにしては綺麗な写真ばかりが揃っている。レイアウトについてもシンプルでわかりやすく、まさしく「映画雑誌のベストバイ」である。

→第15回「HiVi」へ続く

ムービー・スター

「ムービー・スター」
株式会社イン・ロック
毎月4日発行
発行部数13万部
http://www.inrock.co.jp/moviestar/

今回取り上げたナンバー
「2004年11月号」560円
表紙/ジョニー・デップ

※主な記事
第61回ヴェネチア国際映画祭特集
将来有望ACTORS FILE
Uprising Korea
ムービー・スター・ニュース

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2004年10月11日