映画雑誌雑感
映画芸術

 この雑誌は、僕がこのコーナーを始めたのがきっかけで初めて読んだ。「映画芸術」という名前がいかにも大仰で、てっきりお堅いインテリ向けの雑誌だと勘違いして、今まで見向きもしなかったものだが、食わず嫌いはいかんです。
 季刊誌でお値段は千円強と雑誌らしからぬ高さで、さらに全部のページが一色印刷と、第一印象からして不利な点が多く、発行部数も1万部に届いていないが、これが中身の濃さでは決して負けない内容である。たしかに面白いからこそ、そういう不利な点も克服できたのではないか。ポイントはジャーナリズムを貫いていること。これは貴重である。記事を書くために足を使うわけだけれども、1ページに費やす労力はちょっと要領が悪そう。安月給の編集者たちが自腹切って各地に飛び回り、終電まで働いたかのような(違ってたらごめんなさい)血と汗と涙がにじみ出ている。レビューは一般人の投稿だし、ミニコミのノリではあるが、キネマ旬報と渡り合えるほどの本格的な記事の内容には唸らせる。たぶん英語を話せるスタッフがいないのか、取材先は国内限定で、おのずと邦画中心の内容になっているが、インタビューの話題から脱線した雑談など興味深く、当人の作品を知らなくても案外と楽しめる。また、本誌だけがポルノ映画も一般向け映画と分け隔て無く取り上げていることも尊敬に値するポイントだ。
 気取らずおごらず、その丹念かつ真摯な記事を読んでいると、雑誌なんてカラーページが1ページもなくともなんとでもなることがわかる。今まで僕が読んできた雑誌のほとんどは、レイアウトやキャッチコピーやグラビアのかっこよさ・派手さだけに乗せられていたことに気づかされた。「映芸」の前には、他誌がバカバカしく思えてくる。僕はこういう映画雑誌を求めていた。

→第19回「FLIX」へ続く

映画芸術

「映画芸術」
有限会社編集プロダクション映芸
季刊誌
発行部数7000部
http://members.at.infoseek.co.jp
/eigei/index-1.html

今回取り上げたナンバー
「2004年秋号」1200円
表紙/血と骨,ニワトリはハダシだ

※主な記事
2004年秋の映画を襲撃する!
女性的な内密性 映画の内部反映運動
FILM CRITIQUES
メカス どこにもないところからの手紙

2004年11月24日