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ドイツ時代のラングとムルナウ |
有楽町の朝日ホールで2005年9月に開催されていた映画祭「ドイツ時代のラングとムルナウ」について。 フリッツ・ラングもF・W・ムルナウも好きな監督だし、滅多なことじゃ見られない二大ドイツ監督のサイレント時代のレアな作品をまとめて見ることができる機会はそうないだろうということで、喜んで見に行った。欲を言えばエルンスト・ルビッチの映画も上映してもらいたかったが、これだけの作品をスクリーンで見られただけでも良い経験だったろう。 ムルナウの作品も悪くはなかったが、この映画祭を通じて、やっぱりラングは偉大だと思った。ラングは自分が表現主義者と言われることを嫌っていたというが、やはりラングは表現主義の監督だと再確認した。「メトロポリス」の幻覚的なシーンなど、それこそ表現主義である。 「スピオーネ」も見応えがあった。ラングにとってはトーキー初期の「M」やアメリカ時代の「暗黒街の弾痕」とならぶ犯罪映画である。しっかり丹念にストーリーが練りこまれていて、さながら大河ドラマのような壮大なミステリー映画であった。 ラングやムルナウとは無関係の話になるが、今回の映画祭で一番印象に残ったのはピアノとバイオリンの演奏である。ピアノとバイオリンの生の音がこんなに美しく、表現力豊かなものだったとは思わなかった。映像にあわせて効果音的な演奏も見事にこなしていたし、ピアノだけでも喜びや悲しみ、興奮状態など、さまざまな人間感情とシチュエーションを表現していた。音も分厚く、マイクなしでも会場全体に美しい音色が響き渡っていた。「ファウスト」のラスト・シーンについては映画の内容よりも演奏の方に感動したくらいだし、観客の拍手喝采はいつまでもなりやまなかった。こんなに素晴らしいライブを映画をみる料金で享受できたのは儲けものだった。 ちなみに、映画祭では知人ともばったり会った。こういう趣味的なイベントでは、同じような趣味を持つ人と会っても不思議ではない。しかしなんと狭い世界だろうか。とはいえ、フリッツ・ラングのネームバリューだけで会場は満員になったのだし、同じ趣味の人たちがひとつの場所にこれだけ集まったことを考えれば、大した映画祭だった。 |
2005年10月16日 |