巨匠の歴史
 第35回

ジョン・カーペンター
モダン・ホラーはカーペンターから

ハロウィン   ●きっかけはハワード・ホークス
 かなりカルトな監督だが、映画マニアなら「ジョン・カーペンター監督作」と聞いただけで見たくなるものである。実にクセのある映画ばかりを撮っているが、実力は確かで、「危険な情事」でもぜひ監督してほしいと依頼されたことがある。
 彼が映画監督になったきっかけはハワード・ホークスである。ホークスのSFホラー「遊星よりの物体X」に心底感動した彼は、自らこの映画のリメイクを熱望。名門南カリフォルニア大学の映画科で映画を学び、在学中にアカデミー賞の短編映画賞を受賞した。
 74年、親友のダン・オバノンと組んで「ダーク・スター」を発表。「2001年宇宙の旅」風のSF映画だったが、これが批評家にも受け、好調な出だしを飾る。76年には憧れのホークスのオマージュとして「要塞警察」を発表、これまた批評家から高く評価された。



●「ハロウィン」が大ヒット
 30歳で撮った「ハロウィン」はカーペンターの出世作となった。これはもう伝説的なホラーであり、ここからホラーの歴史が塗り替えられた。殺人鬼の視点になった一人称カメラや、ショッキングな描写は、後のスプラッター・ホラーの先駆といっていい。たった30万ドル、一ヶ月で撮影したものであるが、これは世界的に大ヒット。ヒッチコックの後継者と評価する者もいた。ホラー映画の価値を示したカーペンターを崇拝するホラー・ファンは今でも多い。


●有名作品を題材にして
John Carpenter (1948-) カーペンターは古典を好んだ。だから古典を題材とした作品も多かった。82年には念願のホークス映画をリメイクして、「遊星からの物体X」というタイトルで公開したが、オリジナルとはまったく趣向の違う、グロテスクなSFホラーとして完成させている。生首から足が生えてきたり、おぞましい映像が目白押しで、この手のギミック映画では、金字塔というべき傑作だ。
 この他、「呪われた村」を題材にした「光る眼」や、「透明人間」を題材にした「透明人間」などを、オリジナルとはまるで違うタッチで演出している。
 プロレスラーを起用して作った「ゼイリブ」は哲学感さえ漂わせる新感覚の異星人侵略映画で、同監督の野心が伝わってくる代表作だ。
 フィルモグラフィ
74 ダーク・スター
76 要塞警察
78 ハロウィン
78 アイズ
79 ザ・フォッグ
79 ザ・シンガー
81 ニューヨーク1997
82 遊星からの物体X
83 クリスティーン
84 スターマン 愛・宇宙はるかに
84 フィラデルフィア・エクスペリメント
86 ゴースト・ハンターズ
87 パラダイム
88 ゼイリブ
90 レッド・テキサス
92 透明人間
94 マウス・オブ・マッドネス
95 光る眼
96 エスケープ・フロム・L.A.
98 ヴァンパイア 最期の聖戦
01 ゴースト・オブ・マーズ
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