パラダイム

 ジョン・カーペンター流の吸血鬼映画というかゾンビ映画というか。主演は牧師役にドナルド・プレゼンス、科学者役にヴィクター・ウォンという泣く子も黙る強烈なカップリング。前半はうるさいBGMに乗せて、超常現象について科学的な見地から描いているが、後半からは科学の及ばないオカルトチックなストーリーへと展開していく。悪魔の液体が水鉄砲のごとく飛んできて、それを飲んでしまった者は悪魔の下僕となる。悪魔の下僕に殺された者、下僕の口から飛び出す液体を浴びた者も悪魔になる。こんな調子で町の外のみんなは根こそぎ悪魔と化し、世界は悪魔に支配されていく。取り残されたのは建物に立てこもった数名だけ。

 僕は一番の美女役が早々と悪魔になってしまうところがショッキングだった。ここからストーリーは怖い方へ怖い方へと急展開していく。昨日まで楽しく一緒に会話していた仲間が、今日は暗い部屋でうつろな顔して座ってたら、そりゃ怖いわな。一番気の毒なのは体中がどろどろになってしまった女性。どうしてこうも女性ばかりが犠牲になるのかと、カーペンターの悪趣味ぶりに乾杯。でも一番怖いのは、クローゼットに隠れていた中国人の青年が、懐中電灯でやたら悪魔の方をじろじろ見るところ。どろどろになった横顔を興味本位で覗いていたら、いきなりじろっとこっちみて目が合う瞬間は、まじで危なっかしく、冷や汗ものである。

原題:Prince of Darkness (暗黒の王子)
製作年:1987年
製作国:アメリカ
監督・音楽:ジョン・カーペンター
出演:ドナルド・プレゼンス、ヴィクター・ウォン
上映時間:103分
「パラダイム」DVD

2004年9月1日