週刊シネママガジンDVD/ガイド発掘ビジュアル世界のCMフェスティバル2005

第7回「世界のCMフェスティバル2005」(CM)

 行ってきましたよ「世界のCMフェスティバル2005」。僕はこの年初めて行ったけれども、実はこのフェスティバルは2005年で25周年だという。こんなに面白いフェスティバルを今までずーっと知らなくてごめんなさい。
 当サイトでは以前こちらのページでも紹介したが、知らない人のためにもう一度説明すると、これはオールナイト7時間夜明けまでCMを見続けるというプログラム。お酒を飲みながら、みんなでワイワイ楽しみながら一夜を明かす。もともとはフランス発のフェスティバルだが、日本では1999年に博多から起きたムーブメントだ。観客人数は毎年ひとつの会場で1000人以上、開演1時間前から並ばなければ立ち見になってしまうほどの盛況ぶりで、やがて東京に進出。さらに大阪ヨーロッパ映画祭との共同プロデュースで大阪にも進出。2005年は福岡・熊本・鹿児島など九州圏を制覇しつつ、札幌・名古屋と全国的に展開。東京では新宿ミラノ座で開催された。この日は歌舞伎町のシネシティ広場を囲むように円形状の長蛇の列ができた。博多弁ペラペラの仕掛け人ジャン・クリスチャン・ブービエ氏も司会として登場。とても愛嬌のあるおじさんだった。
 僕の素直な感想は、いやほんと理屈抜きに面白かった。CM上映あり、サンバあり、オペラあり、抽選会ありのまさにお祭り。会場では拍手用のパチパチスティックが観客全員に手渡されて、いやがうえにも盛り上がった。500本以上のCMを上映するのだが、1本目から拍手パチパチ。以降、CM一本見るたびに拍手パチパチ。CMに音楽が使われていたらそのたびに会場全員が音楽にあわせて手拍子パチパチ。この異常なまでの盛り上がりはなんなんだ? もはや「ロッキー・ホラー・ショー」状態。始めのうちは、7時間もこのハイな状態を持続させなくちゃいけないのかと思うと脱力感に襲われたが、ところが15本もCMを見ているうちに、だんだんお祭りの世界にのめり込んでいる自分に気づいた。ボジョレ・ヌーボーなどがただで飲み放題だったので、アルコールがまわっていたせいもあるが、わずか数十秒の短編映画を立て続けにみているわけだから、いっときも気が緩むことなく、最後まで楽しく見ることが出来た。7時間もあっと言う間。正直、終わったときには寂しささえ感じたくらいだ。カンヌで最高賞を取った作品や、エミール・クストリッツァ監督のいかにもそれらしいCM作品もあってラインナップは文句なし。深夜上映だったので、コンドームのCMなど、お色気CMや下ネタ系CMなどが多かったのも良かったのだと思う。
 基本的には最後に意外性のあるオチが待っているユーモラスなCMばかりだったように思う。最初は何のCMなのかわからず、最後の最後になってなるほどと言わせるものが多かった。「なるほど」感が大きなCMほど拍手喝采は大きく、逆に意味がよくわからないCMには拍手は聞こえてこない。僕は自分で良いと思ったCMにしか拍手をしないようにしていたが、他の客もそうだったと思う。一部日本語字幕のないCMもあったが、客席の反応は冷ややかだった。やはり字幕は大事だということだ。「アンダルシアの犬」ばりにシュールなCMも1本だけ流れたが、これに拍手喝采したのは僕くらいなもので、他の人は「?」という感じだった。ある程度社会事情や雑学に詳しくなければわからないCMも多かった。例えば、黒人が白いペンキをかぶってエミネム(白人ラッパー)の真似をするMTVのCMも、エミネムが日本に浸透していないので客席は「?」という感じだった。
 ウチは映画のサイトなので、映画がらみのCMについて書かせてもらう。反応が良かったのは「雨に唄えば」のパロディ。ジーン・ケリーが雨の中、テーマ曲を歌う名場面がそのまま引用されているかと思ったら、いきなりジーン・ケリーがブレークダンスを始める。歌もヒップホップ風にアレンジしてあった。何の商品のCMだったかは忘れたが、CGに感動したもんだ。
 こういうCMもある。まず延々車が走っているシーンが流れる。バックに流れる歌は「ミセス・ロビンソン」。なんだか「卒業」みたいだと思っていたら、その車を運転していたのがダスティン・ホフマンだったというのがオチだ。シトロエン、プジョー、BMW、メルセデスなど、車のCMには傑作が多い。
 僕が一番感動したのはスティーブ・マックイーンが出てくるCM。もちろん合成である。どこかの農夫のおっさんが自分の畑の一部をコンクリートで埋めてレーシング用の道を作ってしまう。で、愛車を転がそうとしたら、そこにスティーブ・マックイーンが登場。おっさんは驚いてマックイーンに車のキーを渡し、マックイーンはやおら運転を始める。すごく夢のあるCMだった。個人的にこの日のベストCMとしたい。
 それにしてもアディダスのCMはかっこいい。僕はアメリカ好きなのでずっとナイキ派だったが、今日からアディダス派に転向しようと思った。商品の品質がどうというよりはCMのかっこよさが決め手である。それほどCMの威力は計り知れないのだ。

adidas
アディダスのCMはかっこよすぎ! 今回のCMフェスではサッカー選手の出演作品が目立った。

adidas
▲会場の様子(公式サイトから)。こんな感じでオールナイト7時間寝ないで大盛り上がり。酒飲み放題。拍手の嵐!


ペリエはCMフェスティバルのスポンサーでもある。会場ではペリエが飲み放題だった。

 

2005年11月19日