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日本人は、CMをあまり見ないときてる。CMが始まった途端にバシバシとチャンネルを変える人が多い。人によっちゃ、CMが始まると消音モードにする。これは、番組がモノラルで、CMがステレオなので、CMになると急に音量が上がってわずらわしいからである(最近のテレビではCMになると自動的に音量を下げる設定ができるようになった)。嘆かわしいことだ。もっと日本人にはCMを見てもらいたい。
外国人はテレビをつけっぱなしにしない。テレビは見たいときにしかつけない。CMでチャンネルを変える悪い癖もない。海外のCMはじっくりと見られる。ちょっとした短編映画気取りだが、商品名・ブランド名は最後に表示されるので、逆にいえば、最後まで見なければ何のCMかわからないのも特徴である。
「CM喰らい放題の夜」は、全世界から500本のCMを集め(悲しいことに日本のCMが入っていない)、たった一夜(6時間)で一挙公開してやろうというイベントである。「ま、ドリンク片手に気軽に見ようや」というお祭り感覚の上映会は、いかにもCM好きなフランス人らしい贅沢な、あるいは無謀な発想である。
一本の作品が1分以下なので、いっときも気が許せないかと思われがちだが、なにしろCMなので、全部が休憩みたいなもの。見る見ないは観客の自由である。訴求力のないCMはすぐに忘れられても仕方がない。
ゴルバチョフ本人が出たCM、ジャン・ジャック・アノーが手がけたCM(右写真)、日本では放送不可能と思われる恐ろしいCMも上映された。日本ではなじみがないアルゼンチンやチュニジアの映像作品も見られるが、長編映画が日本に輸入されないのが不思議なくらい各国良作揃いである。すべてに共通することは、たとえ短くとも、たっぷりお金をかけて、企画を練り上げ、入念に作られていることである。よくできているのはオランダ製のCMで、構成が絶妙で、映像のクオリティも高く、字幕無しでも内容が伝わる。ひょっとしたらオランダは世界一のCM大国なのかもしれない。
あえて本作には字幕がついていない。中国語も韓国語も字幕は無し。なんと言ってるのかわからないが、映像を感性だけで楽しむように考慮されているのだという(たんに翻訳者を雇えなかっただけかも?)。そこが本作の一番ユニークなところで、こうも延々とCMだけを見せられると、外国の国民になった気さえしてくるものである。ときどき出てくる古くさいCMは、時代を偲ばせるし、レトルト食品や生活用品のCMはさらに生活感を醸し出している。CMというものは、親近感があり、妙に懐かしいものである。
CMの不幸なところは、目的があくまで商品を宣伝することだ。どんなに中身が面白くても、宣伝効果がなければ失敗作になる。となれば、やはりコマーシャル・フィルムは映画とは言えないのだろうか。いや、CMも高度な映画の一形式であることが、本作を通して納得していただけると思う。CMを見るためにお金を払うのも一興だ。
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原題:La
Nuit des Publivores
製作年:2001年
製作国:フランス
製作:ジャン・クリスチャン・ブーヴィエ
上映時間:6時間(オールナイト上映)
DVD
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日本の素晴らしきコマーシャル・フィルム2003
「¥shop/武富士ダンサーズ」(パッション系)
「お自動さん/どうするアイフル」(ユーモア系)
「むじんくん/はじめてのアコム」(ヒーリング系)
◆世界のCMフェスティバル2005レポート
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