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色々な映画をパクった低予算映画といわれているけど、これが予想に反して面白い。キャストもマニアックだし、僕はこういう未来社会の映画をこよなく愛する男なので、かなりワクワクしながら見させてもらった。僕と同じベクトルを持つ人なら、ぜひだまされたと思って見て欲しい。決して損はないと思う。
これを見て、間違いなく思い出されるのは「華氏451」である。「華氏451」が文字を読むことを規制された未来社会を描いた作品なら、「リベリオン」は感情を持つことを規制された未来社会を描いた作品ということになる。
第三次世界大戦終戦後の未来、社会の安全のために、人間が感情を持つことを許されなくなる。この社会の人間たちは、喜ぶこと、怒ること、欲することなく、独裁者のいうままに生活していることになる。無論、小説や絵画や音楽など芸術といわれるものは一切禁止だ。主人公の職業はクラリック(聖職者)と呼ばれるもので、感情を持った人間(違反者)を焼き殺すのが仕事である。
この映画は敬虔なクラリックである主人公が、しだいに感情を持つ喜びを知り、ついには黒幕をやっつけるというお話である。見せ場は、クラリックだけが習得する「ガン・カタ」という銃を使った武術アクションである。主人公はこの武術の熟練者であり、彼がどんな敵も糸もたやすくやっつけていく様が、ストイックでやたらとかっこよく、そこがマニア受けした要因らしい。たしかにこの映画の監督はかなりのオタクらしく、銃撃戦ひとつひとつにコダワリが見られる。中でも劇中登場する銃器(実在モデル。というかホンモノ?)の種類の豊富さには男心をくすぐられる。
いかにも金がかかってなさそうな映画であるが、その分ストーリーがしっかりと練られており、見せ方がうまい。まんまと予想外の展開にしてやられるし、回想シーンの挟み方など絶妙である。ちょっとシリアスすぎて、悲しすぎる内容ではあるが、その冷たさも含めて見応えがある。
絵画や音楽を愛する僕としては、やはりアクション・シーンよりも、主人公が感情を持つことに目覚め、五感で感じるあらゆるものに感動する描写が気に入っている。主人公は、ただ壁のでこぼこを触るだけでも感動している。夕陽を見てその美しさに見とれ、ベートーベンを聴いて涙まで流す。怒るときは手をグッと握りしめる。なんとわかりやすい描写であるか。
感情がなければ、人間はいったい何のために生きているのだろうか。これは、人間は感動するために生きているのだという生命の賛歌をうたった、非常に意義ある映画である。その意味で、見終わった後も色々なことを考えさせられた一本だ。傑作。
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統制された未来社会を描いたSF映画
「華氏451」(66年/イギリス)
「ガタカ」(97年/アメリカ)
「マトリックス」(99年/アメリカ) |