第1回「ワンダと巨像」(テレビゲーム)

 このゲームには本当に驚いた。これはゲーム史において歴史を塗り替えるほどの大傑作となっただろう。少なくとも僕にとっては、セガの「エターナルアルカディア」、コナミの「メタルギアソリッド2」と共に、生涯大切にとっておきたいゲームになった。
 とにかくこれは映像が美しい。ただゲームの中の景色を眺めているだけでも気持ちが良い。映像の中に大気を感じるのだ。差し込んでくる光、水のしぶき、舞い上がる砂埃、生き物の毛並み、動物的な躍動など、それまでのゲームの映像表現技術をはるかに超えている。驚くのはシームレス(継ぎ目がないこと)に広がる世界の映像。それまでのゲームは場面が変わるたびに「ロード中」と表示されて映像がとぎれてしまうのだが、このゲームには「ロード中」の概念すらない。本当にそこの世界にいるように錯覚させる。とてもプレステ2のソフトとは思えないが、ちゃんとプレステ2の動作環境で動いているのだから驚く。
 ピクサーアニメを始め、映画のCGに見慣れた人には、この映像は少し粗い映像に見えるかもしれない。しかしこれはゲームである。映画とは違って自分で登場人物を自由に操作することができるのだから、それでこの映像美は大変な技術だということをわかってもらいたい。僕はゲームの黎明時代からずっとゲームをやりつづけてきたから言えることだが、かつてこれほど映像がリアルで美しいゲームはなかった。これはまさにゲーム本編とイベントムービーが全く同じクオリティで展開している。ゲームの映像はいったいどこまで進歩していくのだろうかと、これから先が楽しみになってくる。
 ゲームのメインは大ボスとの戦い。なんとこのゲームには中ボスもザコキャラもいない。ただひたすら16体の大ボスを1体ずつ倒していくだけの極めてシンプルなプロットである。そこがかえって崇高なイメージを持たせる結果になった。また、1体1体の大ボスにこだわりを感じる。どのボスも自分の10倍はでかいかと思われるほどの巨体だ。初めて敵を目前にしたときは本当に恐怖心を覚えてしまう。踏みつぶされればひとたまりもないだろう。力では負けるので、頭を使った戦いが要求される。始めのうちはついつい逃げ腰になってしまうが、しだいに敵を打ち倒す攻略法がわかってくる。後は1対1の根比べである。「なるほど、こうやって倒すのか」と、思わずうなってしまう攻略ギミックに感嘆することだろう。
 このゲームの一番面白いところは「しがみつくこと」である。自分の10倍はでかい巨人の足にしがみつき、振り落とされないように体を這い上がって頭部まで行き、渾身の力をふりしぼって剣を頭部に突き刺す。血が噴き出し、巨人がどんなにもがき苦しんでも手を離しては駄目だ。このアクションのなんたる重量感だろうか。長期戦の末、とうとう敵を打ち倒したとき、巨人は派手に崩れ落ちていく。これもまた凄まじい重量感の映像である。加速感もブラー効果でより本物っぽく見せているし、巨人の動きといい、主人公の動きといい、これほど見事に重量感を表現している映像は映画のCGの世界にもなかった。精一杯力を込めて剣を突き刺すときは、思わず自分まで力んでしまうほどだ。今後、映画の世界にも影響を与えることは必至である。そんじょそこらのCG映像が安っぽく思えてきた。それほどこれはビジュアルショックであった。


▲敵の動きは鈍いけれども、大きさが大きさなだけに、映像もかなり豪快に感じる。舞い上がる砂埃がリアルだ。馬の動きも素晴らしい。


▲こんなバカでかい敵を相手にいったいどうやって戦えというのだろうか? そういう得体の知れない怖さを感じる。長期戦の末、ついに敵を攻略したときの快感はひとしおだ。


SCE「ワンダと巨像」
プレイステーション2用ソフト

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2005年11月4日