→「転々」キャスト吉高由里子トークショー
→「転々」撮影用デジタルビデオカメラ・ワークショップ

 「時効警察」の黄金コンビ、オダギリジョー×三木聡が、日本映画界に新風を吹き込んだ。ひょんな縁で出会ったオダギリジョーと三浦友和の2人が東京の町を転々とお散歩するというそれだけの内容でありながら、これは今までになかったテイストの笑いと感動を与えてくれる。井の頭公園に始まり、目的地の霞ヶ関まで、個性豊かな東京市民たちを通して、東京の下町をコミカルに描出している。中央線から山手線。みんながよく知っているメジャーなようでマイナーな東京お散歩スポットの数々。東京がこんなに愛くるしい町だったなんて。2人の主人公は、途中いろいろな人たちに出会いながら、ぼちぼち身の上話なんぞ語りあってみたり、最初はまったく赤の他人同士だったのに、しだいに親子みたいな関係になっていく。でもこれこそ日本のココロ。これぞメイド・イン・ジャパンのケッサク。

 三浦友和は新境地を開拓した。この髪型。この服装。ちょっぴり変人風。とくに履いている靴なんかそこら辺のスーパーに売ってるような奴で、笑ってしまうほどダサいんだけど、でもなんだかよくみてると、これがだんだんかっこよく見えてくるのだから不思議。実は犯罪者なのに、ちっとも悪い感じがしてこない。そういう不思議さが、この映画の魅力。

 もちろん三木聡監督ならではの小ネタも満載。この小ネタが飛び出すタイミングが絶妙。ギャグのセンスが他のコメディ映画とはひと味もふた味も違う。息抜き的に挿入されるスーパーマーケットのコントが映画の段落的な役割を果たしていて、ただ笑わせているだけでなく、きちんと映画の流れも考慮して作られている点も高く評価したい。セリフもマヌケで面白いけれど、町中の看板や町並みにもちょっとしたユーモアセンスを感じる。ただその映像が画面に映っただけで笑えるという画的な妙味である。手をつないでいる男女の映像が出たかと思うと、次は手錠をつながれている男と警察の映像が出てきたり、実は割と高等テクのギャグも多数散りばめられているのだが、とにかく理屈抜きに楽しめる。

 筆者も映画館でこんなに笑わせてもらったのは初めてだった。まわりにいたお客さんたちも始終くすくすしてて、笑うところではみんな一斉にゲラゲラ笑っていた。映画館でみんなと一緒にこうして思い切り笑うことがこんなに楽しいものだったのかと初めて思った。そして最後にはちょっぴりホロリ。サラッと終わらせるタッチもお見事だ。↓

「転々」
食べているものがオーギョーチィというのがなんだか可笑しい(というか、ただのゼリーにみえるよ)

キョンキョンも出てるぞ
キョンキョンも出ています。しかも放送禁止すれすれのセリフにも挑戦。

転々は11月10日公開!
成り行きで、おかしな即席ファミリーが誕生?ちなみに映像はキヤノンのデジタルビデオカメラで撮影されている。

11月10日(土)
渋谷アミューズCQN、テアトル新宿ほか、全国ロードショー
(C)2007「転々」フィルムパートナーズ
監督・脚本:三木聡
出演:オダギリジョー、三浦友和、小泉今日子、吉高由里子

公式サイト→http://tokyosanpo.jp

     


「転々」トートバッグ
吉高由里子さん

10月10日(てんてん)は「転々」の日ということで、TOKYO FMのホールにて試写会が行われました。サプライズゲストとして、映画の重要キャラふふみ役を演じた吉高由里子さんのトークショーがありました。吉高さんが出てきたら、客席のあちこちから「可愛い!」と声が出ました。

10月10日(とうとう)ということで、吉高さんは完売店続出の「転々」トートバッグを持って登場。抽選会を実施し、運の良いお客さんがトートバッグをゲットして帰りました。

吉高さんは「オダギリさんじゃなくてごめんなさい」と申し訳なさそうに挨拶。というのも、試写会場に来たお客さんのうち、9割以上は女性客だったのです。だからオダギリさんのサイン入りポスターの抽選会では会場が大騒ぎでした。

吉高さんは、舞台挨拶でも映画の中のふふみ顔負けの不思議少女ぶり全開でした。小泉今日子さんについてのコメントでは「もうキョンキョン〜♪って感じでした!」と言って会場を笑わせました。

吉高さんは最後に「転々」はとっても温かくて可愛い映画とコメントしました。そんな「転々」は、いよいよ11月10日の公開です!


ここからはちょっとマジメなお話です>
 2007年10月25日、ユナイテッド・シネマ豊洲にて「転々」のカメラ、編集に関するワークショップが開催された。「転々」の撮影監督谷川創平氏、プロデューサーの代情明彦氏(葵プロモーション)、アシスタントプロデューサーの伊藤太一氏(葵プロモーション)が登壇した。

 「転々」はとぼとぼ東京を散歩するロードムービーであり、ほぼ全編野外ロケのため、手持ちで身軽に動けて、狭い場所、暗い場所でもスムーズに撮影ができ、なおかつ映画館のスクリーン上映に耐えうる映像が撮れる高性能のカメラが必要だった。そこですべての撮影条件を1台で満たせるキヤノンの業務用デジタルビデオカメラのXL H1が採用されることになった。

 「転々」では、すべてのシーンが、このキヤノンのXL H1の1080/24FモードHDV(ハイビジョン映像)フォーマットで撮影された。このデジタルビデオカメラの性能について実際に撮影した映像を見ながら確認していくのがこのワークショップの目的である。

 オダギリジョーが夜の新宿をかけまわるシーンなども、手持ちカメラでゲリラ的に一発撮りしており、それでいて町の灯りが見事な効果を上げている様子が説明された。もしもフィルムカメラで同じシーンを撮っていたなら、どれだけの人手、時間、経費がかかっただろうか。

 デジタルビデオのメリットは、フィルムよりもローバジェットですむことと、機動性が高いこと。HDVだと、編集も比較的スムーズである。撮影した映像はAppleのFinal Cut Proに取り込んで編集する。ノンリニア編集なので作業スペースも取らず、融通も利く。

 完成された映像は、ビデオカメラで撮られたものとはとても思えない映像になっている。その色合いといい、質感といい、従来のフィルム映像と何ら遜色はなく、一般人はここまでの制作過程を意識せずとも、従来の映画のように、味わい深い映像を堪能することができる。

 撮影監督谷川氏は「このシステムをとったことで、映画が良い方向に転がった。監督も映像に関しては大満足していました」とコメント。プロデューサー代情氏は「コスト的にも200万円ほど抑えられて満足していますが、さらに機動性もあがったし、お金に換算できないところでも貢献している」とコメントし、今後も積極的にデジタルビデオカメラを取り入れていく姿勢を示した。

 これは、今後、映画の撮り方が大きくかわることを予感させるワークショップであった。これからはフィルムカメラではなく、デジタルビデオカメラが主流となっていくことは間違いない。利便性に優れたHDVでも、フィルムカメラ以上のクオリティで商業用映画が作れるということが、今もって「転々」によって証明されたのだから。

XL H1
キヤノンの業務用デジタルカメラ「XL H1」

編集フロー
左から撮影監督谷川創平氏、プロデューサー代情明彦氏、アシスタントプロデューサー伊藤太一氏

編集フロー
「転々」の編集フロー。MacG5が編集に使われ、最後に35mmのフィルムにキネコされて上映される

11月10日(土)
渋谷アミューズCQN、テアトル新宿ほか、全国ロードショー
(C)2007「転々」フィルムパートナーズ
監督・脚本:三木聡
出演:オダギリジョー、三浦友和、小泉今日子、吉高由里子

取材担当・澤田

 

2007年11月5日