週刊シネママガジン特別企画シネマガプレスオープン・ウォーター

オープン・ウォーター

 インディペンデント界から、クリス・ケンティス&ローラ・ラウ夫妻(「グラインド」の監督・プロデューサー)による、全米を震撼させた恐怖映画の登場。この2人、コーエン兄弟に次ぐ、将来有望の名コンビである。「オープン・ウォーター」は低予算映画にして、全米で大ヒットを記録。内容は、ダイビングツアーに参加した夫婦が、何かの手違いで海に取り残されるというもの。主要登場人物はたったの2人。舞台は延々海の真ん中。周りには何もなく、見渡す限り海。助けも来ない。足は届かない。喉は渇く。水は冷たい。この最悪の条件での恐怖のサバイバル。
 この映画の怖さは、そのリアルさにある。最初は映像が汚いと思ったが、後からそれも気にならなくなった。むしろその映像の粗さがドキュメンタリーぽくて良かったのだと思う。それはもう海水の冷たさまで伝わってくるリアルさである。夫婦の会話の一言一言、心理描写からして本物っぽく、フィクションを思わせるような演出は極力排除してある。基本は「海に取り残される」という1本の筋だけに視点を絞って、時系列に沿って、じわりじわりと描いていくゆえ、見ている方もぐいぐい引き込まれ、登場人物と心理が一体化する。普段ハリウッド映画を見て、登場人物が無数の敵に襲われたところで屁とも思わないはずだが、「オープン・ウォーター」は別で、見ている途中で何度も「もし自分が同じ立場だったら・・・」と考えさせられてしまう。すぐそばにうようよいる鮫を見た瞬間、本気でゾゾゾッとしてしまう。これは本能的に怖い映画である。
 見終わった後も、依然としてこの背筋が凍りつくような感覚を忘れることができない。これを見た観客は、スキューバダイビングに行くのをためらったというが、たしかに僕も見終わった後すぐには眠れそうになかったので、わざわざ明るい映画を見て気を紛らしたくらいである。

「オープン・ウォーター」
Open Water
2004年・アメリカ映画・79分
監督・脚本・撮影・編集/クリス・ケンティス
制作・撮影/ローラ・ラウ
出演/ブランチャード・ライアン、ダニエル・トラヴィス
配給/ムービーアイ エンタテインメント
http://www.openwater-movie.jp/

イントロダクション(プレスより)
 2004年1月、サンダンス映画祭。
 世界から注目を集めるインディペンデント映画祭の最高峰において、「オープン・ウォーター」の上映会場は、立ち見が出るほど埋め尽くされ、観客はその驚異の映像に息を呑んだ。
 監督・脚本のクリス・ケンティスは、数年前にダイビング雑誌やニュースレターで目にした、ある特殊な“真実の出来事”から、本作の着想を得た。それは、”オープン・ウォーター<開放水域>に取り残されたダイバー2人”のあの事件…。
 特殊効果やCGは一切使用せず、主演俳優たちが本物の鮫のうごめく海の中で芝居をする、すべて「本物」の、いまだかつて誰も踏みこまなかった恐怖の領域。当初、全米19都市47館の限定公開が、あまりの衝撃的な内容・映像により公開3日間の館アベレージでは、全公開作品中NO.1を記録!(※) 話題が話題を呼び、急遽、全米2709館での拡大公開となった。そのニュースはすぐさま世界に広がり、続く全英公開でもダントツの1位を獲得。(※※) その勢いは止まらず、異例の世界26カ国の公開となり、大ヒットを連発した。いよいよ日本でも、『オープン・ウォーター』が公開。
この夏、もう海には行けない。

※「MOVIELINE」調べ(8/6〜8) 興収1館当り
※※「Screen Daily」調べ(9/10〜12 UK/アイルランド) 興収3日間

2005年6月
シネクイント
シネ・リーブル池袋 他
骨まで凍るロードショー

「オープン・ウォーター」DVD

2005年5月30日