週刊シネママガジン特別企画シネマガプレス第13回大阪ヨーロッパ映画祭

 去年当サイトでも特集した大阪ヨーロッパ映画祭。去年も大盛況だったが、今年はもっとすごいことになりそうだ。

 日本初上映作品も前年を上回る充実のラインナップ。大阪ヨーロッパ映画祭で上映した映画は後から日本でブームになることが多いので、今年もかなり期待できるだろう。来日する映画人も豪華だ。もちろん恒例のディスカッション、サイン会もある。イギリス、フランス、イタリア、チェコ、クロアチア、その他、ヨーロッパ様々の国の映画を集めて、毎度驚かされる。

 今年の名誉委員長はアドリアーナ・アスティ。ルキノ・ヴィスコンティの「若者のすべて」に出演して才能を認められ、以後イタリア映画には欠かせない女優となり、ベルナルド・ベルトルッチ、マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ、ピエロ・パオロ・パゾリーニ、ヴィットリオ・デ・シーカ、マウロ・ボロニーニ、ジョヴァンニ・ティント・ブラス、ルイス・ブニュエルなど名だたる映画監督の作品に出演した。また、数々の権威ある賞を受賞している。イタリアのアカデミー賞に当たるダヴィド・ディ・ドナテッロ賞、ヴィットリオ・デ・シーカ賞、エレオノーラ・ドゥーゼ賞、マスケラ金賞は3度、イタリア映画評論家賞も3度。今年の6月・7月には新作の撮影が日本で行われた。今最も注目されているイタリアの大女優に違いあるまい。彼女の夫であり「ルードウィヒ/神々の黄昏」の助監督でもあるジョルジオ・フェラーラも来日する。ちょうど大阪ミラノ提携25周年ということで、今年の大阪ヨーロッパ映画祭はイタリア映画がすごいぞ。

 当サイトがイチオシするのはオールナイトパーティだ。電動工作機械・廃材を駆使するパフォーマンスで、インダストリアル・ミュージックやノイズ・ミュージックの代表的存在として君臨するドイツの前衛的バンド、アインシュテュルツェンデ・ノイバウテンのメンバー、アレキサンダー・ハッケ(オープニング上映となる「クロッシング・ザ・ブリッジ」の演奏家)とダニエレ・デ・ピチョットによる電子マルチメディア・パフォーマンス(デジタルコンピューター信号とシンセサイザーのアナログの旋律からの音を集約させ、ここで発生する音の衝突が生み出す音楽。 流動的な音がリズムに合わさり、 電子的な機械音とともにハーモニーを奏でる)のライブが行われる他、このバンドを追って石井聰互監督が制作したカルトなドキュメンタリー「半分人間」を上映。会場となる club NOON では、英国人画家ジョン・ミラー(現在は東京で画家とレストラン業を営む)が香港の地下鉄を創るために創作したゴム版画の原画の展示会も開催される。これはまさに五感で楽しめるイベントだ!

 なお、毎回満員必至のCMフェスティバルは、今年はプレ・イベントとなっている。10月13日と14日開催なので、映画祭が始まる前に楽しんでおこう。

イベント・コンテンツ

◆ ヨーロッパ最新映画上映(上映/ディスカッション)
◆ チェコ回顧展1965〜1994(上映)
◆ ルキノ・ヴィスコンティ&アドリアーナ・アスティへのオマージュ(上映/展示)
◆ キンダーフィルム特集(上映/講演)
◆ 展示会ミラーマスクの世界(展示)
◆ 世界のCMフェスティバル in Osaka(上映/パーティー)
◆ オールナイトパーティー(ライブ/上映/展示/パーティー)
◆ 映画塾(レクチャー)
◆ 日本・スペイン文化交流特別イベント(上映/講演)
◆ 開催記念パーティー(パーティー)

最新長編映画11作品の紹介(日本初上映)

「クロッシング・ザ・ブリッジ(原題)」
ドイツ=トルコ映画
【オープニング上映】金熊賞受賞監督ファティ・アキン最新作。2005年カンヌ国際映画祭正式出品作品 (コンペティション外) 。主演のアレキサンダー・ハッケ来日予定。

「ミラーマスク」
イギリス=アメリカ映画
【クロージング上映】気鋭の英国人アーティスト デイブ・マッキーン初監督作品。2005年ロカルノ国際映画祭青年審査員賞受賞、2005年サラソタ映画祭観客賞受賞。デイブ・マッキーン来日予定。
「アイ・アム」
ポーランド映画
実話に基づく物語。音楽はマイケル・ナイマン。2006年ポーランド映画アカデミー最優秀撮影賞受賞。監督のドロタ・ケンジェジャフスカ、撮影のアーサー・ラインハート来日予定。
「人生は、奇跡の詩」
イタリア映画
「ライフ・イズ・ビューティフル」から10年、ロベルト・ベニーニ監督最新作。出演者ニコレッタ・ブラスキ来日予定。
「アンチエイジング・ロマンス」
スペイン=アルゼンチン映画
スペインから、一風変わったラブ・コメディ。2006年マラガ映画祭グランプリ正式出品作品。
「ヴィートス(原題)」
スイス映画
ブルーノ・ガンツ最新作、神童の心優しい祖父を演じる。
「グルバビツァ(原題)」
ボスニア・ヘルツェゴビナ=ドイツ=クロアチア=オーストリア映画
2006年ベルリン国際映画祭金熊賞/平和映画賞/Ecumenical Jury賞受賞。ミリヤナ・カラノヴィッチ 主演
「去り逝く君へ(仮題)」
スロヴェニア=クロアチア映画
ブルーノ・ガンツ最新作、神童の心優しい祖父を演じる。2005年トリノ国際映画祭グランプリ受賞、2005年サン・セバスチャン国際映画祭新人監督賞受賞、ザグレブ国際映画祭正式出品。ヤン・ツヴィトコヴィッチ監督来日予定。

「シモン(仮題)」
オランダ映画
現代オランダ社会を赤裸々に描く話題作。2004年オランダ映画祭 最優秀男優賞(シモン役)/最優秀撮影賞/最優秀作品賞/観客賞受賞。
「闇を走れ(仮題)」
ポルトガル=ブラジル映画
2005年上海国際映画祭金爵賞正式出品作品。2003年ポルトガルアカデミー賞最優秀作品賞受賞。
「リタの息子(仮題)」
ベルギー映画
2006年上海国際映画祭主演女優賞&最優秀脚本賞受賞作。主演のエルス・ドッターマンス来日予定。

以上に加えてフランスから7本の短編を上映。

チェコ回顧展1965〜1994

夏の終わりのコンサート今年の大阪ヨーロッパ映画祭のイチオシは、レトロスペクティブ上映「チェコ回顧展」だ。実は同映画祭でチェコ映画が上映されるのは今年が初めてになる。チェコ映画には傑作が多く、アカデミー賞の外国語映画賞にも何度もノミネートされており、名匠ミロス・フォルマンを生んだ国としても有名だ。そこで今年はチェコ映画で大いに盛り上がろうと、チェコ映画特集を組むことになった。1965年の社会派コメディから、1994年の傑作まで、11作品を一挙上映。チェコ映画の変遷がわかる内容になっている。11作品中6作品はアカデミー賞外国語映画賞ノミネート作品からチョイスしており、そのうち2作はミロス・フォルマンの監督作になる。その他フランチシェク・ヴラーチル、イジー・メンツル、ヤン・スヴィエラークの作品を上映。映画ファンなら涙ものの企画だろう。

ルキノ・ヴィスコンティ&
アドリアーナ・アスティへのオマージュ

揺れる大地今年は大阪・ミラノ姉妹都市提携25周年であり、大阪日伊協会50周年、そしてミラノの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督生誕100周年ということで、今年のヨーロッパ映画祭は、ヴィスコンティ映画でおおいに盛り上がろうということになった。彼のネオリアリズム時代の代表作である「郵便配達は二度ベルを鳴らす」、「揺れる大地」の上映。さらに、今年の名誉委員長であるアドリアーナ・アスティへのオマージュということで、アドリアーナ・アスティの出演作「革命前夜」(ベルナルド・ベルトルッチ監督)も併せて上映される。さらに梅田スカイビルタワーイーストにてヴィスコンティを描いた2本のドキュメンタリー映画「ルキノ・ヴィスコンティの肖像」と「20世紀の巨匠ルキノ・ヴィスコンティ」を上映! また、篠山紀信氏が、ヴィスコンティ家協力のもと撮り下ろした写真集「ヴィスコンティの遺香」とローマ国立映画センター所蔵のコレクションより、2ヶ所にて、写真展が行われる。「週刊シネママガジン」読者にとっては、今年の大阪ヨーロッパ映画祭での一番の見どころではないだろうか。

第13回大阪ヨーロッパ映画祭
2006年11月開催
http://www.oeff.jp/

10イベントスケジュール

1)ヨーロッパ最新映画上映
海遊館ホール
11/23(木)〜11/26(日)
日本初上映のヨーロッパ映画長編11作品と、フランスから7本の短編映画を上映
作品によっては来日ゲストとのサイン会あり
詳しい日程は公式サイトを参照

2)チェコ回顧展1965〜1994
プラネット・スタジオ・プラスワン
11/11(土)〜11/22(水)
「ブロンドの恋」
「大通りの商店」
「マルケータ・ラザロヴァー」
「厳重に監視された列車」
「火事だよ!カワイ子ちゃん」
「暑い夏の影」
「夏の終わりのコンサート」
「スイート・スイート・ビレッジ」
「白いたてがみのライオン」
「小学校」
「ドライブ」
詳しい日程は公式サイトを参照

3)ルキノ・ヴィスコンティ&アドリアーナ・アスティへのオマージュ
特別上映「若者のすべて」

大阪国際交流センター大ホール
11/11(土)14:00
回顧上映

大阪国際交流センター小ホール
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」
11/13(月)19:00
「揺れる大地」
11/14(火)19:00
「革命前夜」
11/15(水)19:00
写真展「ヴィスコンティの遺香」・ドキュメンタリー上映

梅田スカイビルタワーイースト40F
11/3(金)〜11/26(日)
※ヴィスコンティの記録映画2本各1日2回上映
写真展「ヴィスコンティ芸術 創作の歴史」

関空展望ホールSkyView4F
11/13(月) 〜11/16(木)

4)キンダーフィルム特集
(クロアチアの8歳〜12歳の子供たち自身が制作した短編アニメーションを上映)
関空展望ホールSkyView2F
11/18(土)15:00
大阪港・サンタマリア号内コロンブスの間
11/21(火)〜11/26(日)
11:05,12:05,13:05,14:05,15:05,16:05
キッズプラザホール
11/19(日)12:30,13:45,15:00
アニメーション映画学校代表エド・ルックマンの講演会
キッズプラザホール
11/20(月)18:30

5)展示会ミラーマスクの世界
堂島アバンザ・エントランスホール
11/18(土)〜11/29(水)
10:00〜20:00

6)世界のCMフェスティバル in Osaka
プレ・イベント
大阪国際交流センター大ホール
10/13(金)、10/14(土)
22:00〜翌朝5:00

7)オールナイトパーティー
(アレキサンダー・ハッケとダニエレ・デ・ピチョットの電子マルチメディアパフォーマンスライブ、石井聰互監督作「半分人間」上映、英国人画家ジョン・ミラーによる展示会を実施)
CLUB NOON
11/24(金) 21:00〜翌朝5:00

8)映画塾
開催日・開催地は公式サイトを参照
※参加には申込が必要

9)日本・スペイン文化交流特別イベント
(フランシスコ・ザビエルのドキュメンタリー上映、ラモン・ビラロー講演会)
開催日・開催地は公式サイトを参照

10)開催記念パーティー
ウェスティンホテル大阪
11/22(水)19:00〜21:00
※パーティ参加は招待客のみ。ただしランボルギーニによる来日ゲストの到着シーンはどなたにもご覧いただけます。

料金

<ヨーロッパ最新映画上映>

海遊館ホール
※ 前売券 1回券 1,200円 3回券 3,000円 
Pコード 476 - 486  Lコード 54978
※ 当日券 1回券 1,500円 (学生・シニア 1,200円) 3回券 3,500円

<チェコ回顧展1965〜1994>

プラネット・スタジオ・プラスワン
※ 鑑賞料 500円 (各種割引あり)

<ルキノ・ヴィスコンティ&
アドリアーナ・アスティへのオマージュ>

特別上映
●大阪国際交流センター・大ホール
※ 鑑賞料 1,000円

回顧上映
●大阪国際交流センター・小ホール
※ 鑑賞料 500円

写真展・ドキュメンタリー上映
●梅田スカイビルタワーイースト40F
※ 鑑賞無料 (展望台入場料別途必要:大人700円 中高生500円 小学生300円)

写真展
●関空展望ホール Sky View 4F
※ 入場無料 

<キンダーフィルム特集>

●キッズプラザホール
※ 鑑賞無料 (キッズプラザ入館料別途必要: 大人1,200円 小人600円 幼児300円)
●大阪港・サンタマリア号船内
※ 鑑賞無料 (サンタマリア号入船料別途必要: 大人1,500円 子供750円)
●関空展望ホール SkyView 2F
※ 鑑賞無料

<世界のCMフェスティバル>

●大阪国際交流センター・大ホール
※ 前売券 3,500円 Pコード 552 - 430 Lコード 54977
※ 当日券 4,000円

<オールナイトパーティー>

●club NOON
※ 前売券 2,500円 Pコード 240 - 939
※ 当日券 3,000円
(前売券・当日券とも1ドリンク付)

大阪10会場住所

海遊館ホール
大阪市港区海岸通1-1-10
天保山ハーバービレッジ エントランスビル2F
梅田スカイビル 展望フロア
大阪市北区大淀中1-1-88タワーイースト40F
キッズプラザホール
大阪市北区扇町2-1-7 キッズプラザ大阪4F
プラネット・スタジオ・プラスワン
大阪市北区中崎2丁目3-12パイロットビル2F
大阪国際交流センター
大阪市天王寺区上本町8-2-6
ウェスティンホテル大阪
大阪市北区大淀中1-1-20
堂島アバンザ
大阪市北区堂島1-6-20
CLUB NOON
大阪市北区中崎町3-3-8 JR京都線高架下
関西国際空港
大阪府泉佐野市泉州空港北1番地
大阪港 サンタマリア号
大阪市港区海岸1-1-10

大阪市賞、大阪市ヤングシネマ賞

大阪ヨーロッパ映画祭は、コンペティション形式を取っていないが、特に優れた映画作品、映画製作者に対して、大阪市賞、大阪市ヤングシネマ賞を贈っている。この賞のトロフィーは大阪出身の建築家、安藤忠雄氏がデザインしたものだ。

2006年10月10日