Lesson 3
ズーム・ショットと移動ショット
ズーム・ショットとは、すなわち、撮影中に画角を広角から望遠あるいはその逆に変更させるショットである。それは、スティル写真にはない活動写真だけの芸術である。移動ショットとは、カメラの位置を移動させることである。ここでは、とくに前進と後退の移動ショットについて言及する。ズーム・ショットと前進・後退の移動ショットは、同じような意味を持つ。ズームの利点は、カメラの位置を動かさなくとも急速にロングからアップに映像を変えられることだが、ロングでは映像の陰がゆがみ、アップでは遠近感が平面的になる欠点がある。移動ショットは映像的な欠点はないが、ズームほど急速な前進・後退ができない。
次に、印象的なズーム・ショットと移動ショットを、ひっぱりだしてきたので、参考にしてほしい。
下の写真では、ロール・オーバー効果を活用しております。
マウスを写真の上に乗せると、ズームした後の映像を確認することができます。
劇映画では、ズーム・ショットはなかなか探せない。エスタブリッシング・ショットや、看板や手紙の文字を明示するショットなどでしばしば使われるが、人物や小道具にズームする演出は、意外にも少ない。
映画監督の中にはズーム・ショットを嫌い、ズーム・ショットで撮ればいいような場面も、移動ショットや編集に頼るものも多い。
即時性に優れたズーム・ショットは、どちらかというと、ドキュメンタリー・フィルムや、ホーム・ムーヴィー向きなのである。
ズーム・ショットを下手に使った場合、ときに、観客に「カメラマン」を意識させてしまうことがある。それをそうと気付かせない自然なズームを撮れるかは、映画のテンポにも関連している。