Lesson 2
ロー・アングル
ローアングルの定義は曖昧であるが、
(1)被写体を見上げるように撮ったショット
(2)被写体よりも低い位置(ロー・ポジション)から撮ったショット
以上の2つの意味が一般的であろう。(1)の場合、カメラは斜め上を見上げているが、(2)の場合は、カメラが水平に対して平行である可能性も考えられる。(1)と(2)の印象は異なり、映像の意味もずいぶんと違ってくるが、今回はその2つをひとまとめにして勉強しよう。
一般家庭のホームビデオでも、ローアングルは多用している。建物を撮るときは嫌でもローアングルで撮影しているはずである。しかし、映画ではローアングルで撮らざるをえないものだけローアングルで撮っていたのでは芸がない。どうせならローアングルで撮らなくてもいいようなシーンをローアングルで撮ってみたいものである。
ローアングルと聞いて、何よりもまず最初に浮かぶのは、「市民ケーン」である。この映画では全編に渡ってローアングルが頻繁に使われており、ローアングルの妙を体感するにはもってこいである。普通、セットには天井はないはずだが、プロデューサーのオーソン・ウェルズは、セットに天井をはらせて、床に穴を開け、床下から俳優を大胆に撮影した(右写真)。こうすることで、従来の映像にはなかった効果を発揮することができたのである。
ローアングルの効果は様々であるが、次にその効果の代表的なものをいくつか取り上げてみた。
ローアングルは、カメラが趣味になってくると、欠かせない技法になってくる。観光地では、ちょっとカメラに自信がありそうな人がしゃがんで景色を撮っているところをよく見かける。
実際、水平アングルと比較してみても、印象はずいぶんと違う。構図が生きてくるというか、奥行きの水平線が斜めになるので、空間が強調されるのである。
映画を見ていても、意識しなければ普通ローアングルには気付かない。そんな些細な演出が、映画の緊張感を盛り上げていくのである。