巨匠の歴史
 第8回

ポール・ヴァーホーヴェン
イマジネーションとバイオレンスの映画作家

ポール・ヴァーホーヴェン
Paul Verhoeven(1938〜)
オランダのアムステルダム出身
  ●オランダのやばい監督
 ポール・ヴァーホーヴェンはオランダの監督である。テレビの演出家時代に知り合った名優ルトガー・ハウアーの応援もあって、売れっ子映画作家となるが、しかしかなりやばい監督としても知られた。
 幼少時代からナチスの非人道的な扱いを受けて育った彼だから、描くことも強烈で、オナニー、娼婦、ホモセクシュアルなどをモチーフに、映像的モラルを無視したスキャンダラスな作品を次々と作っていた。
 そのどれもが賞を取っていることから、彼は新時代の芸術作家として迎え入れられていたのかもしれない。

●ハリウッドに招かれて
 オランダでは物足りなくなったのか、85年にはハリウッドの門をくぐる。しかし、バイオレンス描写が、オランダのときに比べて、規制されてしまい、思うように作品が作れないことに気付いた。そこで、思い切って材をSFに置き、豊かな空想力をフル回転させて、思う存分暴れてやった。それが「ロボコップ」「トータル・リコール」である。この2作は、何とも考えさせられる暴力とイマジネーションの名作となった。

●エロチック・サスペンスが世界的に大ヒット

 次に手掛けたのはサスペンス映画の「氷の微笑」。しかしこれがまたもスキャンダラスで異色のサスペンス。タブーとされてきた過激なエロ描写を大胆にもやってのけ、センセーショナルな大成功を収めている。
 「氷の微笑」は、公開当時、中学校の教室内で”Hな映画”として噂となり、見たくても見られない学生たちの好奇心を煽っていたものだった。こうしてハリウッドの異才ポール・ヴァーホーヴェンの名は確立されていったのである。

●そして更なるアンモラルの世界へ

 97年には人間と巨大昆虫の戦争を描いたSF大作「スターシップ・トゥルーパーズ」を完成させた。ショッキングな映画であった。戦争賛歌とも捉えられる未来社会の描写と、残酷極まりないドロドロのバイオレンスとブラック・ユーモア、そして反道徳的な主人公たち。知識人からぼろくそに叩かれた映画であるが、この世界観のイマジネーションの深さは、映像的にも思想的にもマニアにはたまらないものがある。
 あくまで”作家”として映画を創造してきたヴァーホーヴェンの描く世界は、優れたアートなのである。
  トータル・リコール

フィルモグラフィ
73 危険な愛
75 娼婦ケティ
79 女王陛下の戦士
80 SPETTERS
82 4番目の男
85 グレート・ウォリアーズ 欲望の剣
87 ロボコップ
90 トータル・リコール
92 氷の微笑
95 ショーガール
97 スターシップ・トゥルーパーズ
00 インビジブル
06 ブラックブック
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