巨匠の歴史
 第23回

スパイク・リー
最も偉大な黒人監督




Spike Lee (1958〜)
アトランタ生まれ
  ●黒人映画を初めてメジャーで公開させた
 ハリウッド映画なんてものは、白人だけしか出ないものである。僕がロサンゼルスを旅したときには、白人はほとんど見かけなかった。ほとんどの人が有色人種だった。それなのに、ハリウッド映画には白人しか出ない。これではあまりにも現実とギャップがありすぎる。サイレント時代から、映画に出演するスターはほとんどが白人。黒人はちょい役ばかり。60年代あたりから黒人を題材にした映画も沢山作られるようになったが、しかしスタッフは白人のままである。
 ところが、スパイク・リーの登場で、ようやく生粋の黒人映画が誕生するのである。
 スパイク・リーの映画には黒人しか登場しない。白人の人が出ないわけではないが、白人は脇役である。スタッフもほとんど黒人。
 しかしこの手の映画は世間では受け入れられないのが現状で、最初はスパイク・リーも苦労していた。24歳にしていくつかの映画賞を受賞するも、大衆は振り向いてはくれなかった。だが、少しずつ評価されつつあった。
 そしてようやく認められるときがくる。「スクール・デイズ」が全米でメジャー公開されたのである。メジャーに黒人映画が登場するのは初めてのことである。

●今にも画面から飛び出しそうな映像力
 スパイク・リーの映画はとにかく熱い。映像のワンシーン・ワンカットから熱気が漂っている。黒人のリズミカルで激しいトークは、画面からいかにも飛びださんばかりだ。スパイク・リーは映像だけでも説得力がある感性の作家である。現在のハリウッドでこれだけ映像力のある作家は他にはいない。
 そして、スパイク・リーは真っ正面から黒人問題に闘いを挑む。その作家性にも敬服させられる。「マルコムX」は、リーの野心と情熱たっぷりで、そのパワフルな映像にはただただ驚くばかりだ。

●「ドゥ・ザ・ライト・シング」が物議を醸す
 スパイク・リーといえば「ドゥ・ザ・ライト・シング」である。これは人種差別問題について扱ったユーモラスな社会派ドラマである。カンヌ映画祭でも大絶賛されるが、結局は受賞できず、アカデミー賞でも惨敗。「なぜ受賞させないのか?」と、黒人問題にまで発展したいわくつきの傑作である。実際、それだけの価値はある素晴らしい出来映えである。

●黒人音楽と黒人スポーツで決める
 黒人は音楽のセンスがあり、スポーツが得意だ。この強みを生かしたのがスパイク・リーの才能である。彼の映画は、ジャズ、ブルース、ソウル、ラップなどの黒人音楽が見事にシンクロされており、バスケットボール、ベースボール、フットボールなどのスポーツを思わせるエネルギッシュな演出が映画にも反映している。
 スパイク・リーは黒人映画作家としては最も偉大であるが、それだけではない。世界的に見ても最も偉大な監督のひとりである。
マルコムX


 フィルモグラフィ
82 ジョーズ・バーバーショップ
85 シーズ・ガッタ・ハヴ・イット
88 スクール・デイズ
89 ドゥ・ザ・ライト・シング
90 モ’・ベター・ブルース
91 ジャングル・フィーバー
92 マルコムX
94 クルックリン
95 クロッカーズ
96 ガール6
96 ゲット・オン・ザ・バス
98 ラストゲーム
99 サマー・オブ・サム
00 キング・オブ・コメディ
02 25時
04 セレブの種
06 インサイド・マン
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