巨匠の歴史
 第18回

ドン・シーゲル
B級映画の雛形を作った巨匠


ドン・シーゲル
Don Siegel (1912〜1991)
  ●B級映画を撮り続けるが
 ドン・シーゲルはかつては「カサブランカ」など、メジャー映画の第2班監督として、実力を見せつけていたが、いざ監督デビューしてからは、まず二年連続でアカデミー賞の子部門を受賞して快調な出だしではあったが、以降B級映画しか撮っていない。というか、撮らされていたのかもしれない。
 彼が長年撮り続けていた作品は、メジャー映画のおまけで同時上映されるプログラム・ピクチャーと言われるもので、もちろん宣伝もろくにしてもらえない。レコードで言えばB面のようなものである。それなのに、彼は「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」などの傑作をコツコツと生み出していた。B級映画でも彼は自分のアイデンティティを守り続け、いわばドンはB級映画の「ドン」のような存在だったのだ。
ダーティハリー
●クリント・イーストウッドを育てる
 変化が起こる。B級映画作家として卓越した才能を見せつけていた彼は、「刑事マディガン」の成功に気をよくして、アクション界のアウトローといえるキャラクター、ハリー・キャラハン刑事を創造する。かつてはジョン・ウェインに出演依頼した役であるが、これを演じたのがクリント・イーストウッド。2人のコンビの息はぴったりだった。これが大成功を収めて、ドン・シーゲルとクリント・イーストウッドの名は一躍メジャー入り。何とも不気味な雰囲気を放つ「白い肌の異常な夜」、脱走ものの極めつきといいたい「アルカトラズからの脱出」など、イーストウッドを主演に傑作を多数作り上げた。
 もとは偽西部劇のヒーローでしかなかったイーストウッドが、アメリカ映画で大成するチャンスを作ったのは、シーゲルだったのである。

●骨太なアクション映画
 「ダーティハリー」からバイオレンス色も強くなり、ますますアクション・ファンを熱狂させるが、何と言ってもシーゲル作品は豪快さと、骨太なアクションがたまらない。スリリング描写も職人技そのもので、連続して想像を絶する展開が迫り来る「突破口!」など、隠れた名作も多い。
 男ジョン・ウェインの最期の勇姿を撮った異色西部劇「ラスト・シューティスト」は、当時癌に冒されていたウェインの最も貫禄のある演技を見ることが出来、シーゲルのベテラン演出家としての才気がうかがえる。
 フィルモグラフィ
49 仮面の報酬
52 抜き射ち二挺拳銃
54 第十一監房の暴動
55 USタイガー攻撃隊
56 ボディ・スナッチャー
57 殺し屋ネルソン
59 グランド・キャニオンの対決
60 燃える平原児
62 突撃隊
64 殺人者たち
68 刑事マディガン
68 マンハッタン無宿
69 ガンファイターの最後
70 真昼の死闘
71 白い肌の異常な夜
71 ダーティハリー
73 突破口!
74 ドラブル
76 ラスト・シューティスト
77 テレフォン
79 アルカトラズからの脱出
80 ラフカット

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