巨匠の歴史
 第32回

ブライアン・デ・パルマ
パロディの巨匠
 

Brian De Palma (1940〜)●恐怖映画作家として
 学生時代、16ミリの自主制作映画がいくつかの賞を受賞、賞金を獲得し、MCAから奨学金を得るなど、早くも映画の才能を発揮。卒業後はドキュメンタリー映画で成功し、本格的にハリウッドに入り、デ・ニーロの作品を2作手掛ける。73年「悪魔のシスター」発表。これが批評家に受け、デ・パーマの映画人生の方向を決定づける。「悪魔のシスター」は主に映像のテクニックで恐怖を描いたもので、それはさながらヒッチコック映画を彷彿とさせた。ビジュアル派の監督がなかなかいない70年代の映画界で、デ・パーマの映画は異様な輝きを放っていた。「悪魔のシスター」以後は、ホラー映画を主力にし、80年代半ばまで一徹に恐怖映画を連発。その中で、「キャリー」はホラー映画の金字塔とされている。

●名作へのオマージュ
 彼はパロディのセンスに長けていた。もともとヒッチコックの「めまい」を見て映画に入っただけあり、ヒッチコック映画に対するオマージュはことさら大きく、「殺しのドレス」「ボディ・ダブル」「レイジング・ケイン」などで、いかにもヒッチコック風の演出を見せている。デ・パーマ映画はどの作品も何らかのパロディを発見できる。ミステリアスで悲しき「ファントム・オブ・パラダイス」はあきらかにゴシック・ホラーのもじりであるし、「スカーフェイス」は「暗黒街の顔役」の再映画化、「ミッション:インポッシブル」はテレビ「スパイ大作戦」の劇場映画化である。転機となった大ヒット作「アンタッチャブル」ではエイゼンシュタインの「戦艦ポチョムキン」のオデッサの階段を思わせるシーンを描き、ビジュアル派としての意地を見せる。デ・パーマ独特のスロー・モーション映像は、一部のファンを魅了してやまなかった。
 
 フィルモグラフィ
66 御婚礼ウェディング・パーティー
68 ブルーマンハッタンII
70 ブルーマンハッタンI
73 悪魔のシスター悪魔のシスター
74 ファントム・オブ・パラダイス
76 愛のメモリー
76 キャリー
78 フューリー
79 悪魔のファミリー
80 殺しのドレス
81 ミッドナイトクロス
83 スカーフェイス
84 ボディ・ダブル
87 アンタッチャブル
89 カジュアリティーズ
90 虚栄のかがり火
92 レイジング・ケイン
93 カリートの道
96 ミッション:インポッシブル
98 スネーク・アイズ
99 ミッション・トゥ・マーズ
02 ファム・ファタール
06 ブラック・ダリア
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