巨匠の歴史
 第20回

リチャード・アッテンボロー
隠れた名役者であり、隠れた名監督


リチャード・アッテンボロー
Richard Attenborough
(1923〜)
イギリスの俳優・監督

  ●チャップリンを見て映画熱が沸き立つ
 リチャード・アッテンボローは現在は英国の才能ある映画監督として、傑作を多数生みだしているが、もとはイギリス映画の脇役俳優である。
 残念ながら、俳優としても監督としても、あまり知名度は高いとは言えないが、彼の作品群のクオリティの高さは、名のある巨匠と引けを取らない。
 そんな彼が映画の世界に入ろうと思ったきっかけは、チャップリンを見てからだという。イギリスのチビ役者が、ハリウッド最高のトップスターになるその姿に憧れ、自分も映画界へ。幸いすぐにデビッド・リーンに認められ、順調なスタートを切る。若い頃はよくイギリスの文芸大作で顔を出していた。

●「大脱走」「砲艦サンパブロ」が絶賛される
 アッテンボローの名声が確固たるものになったのは、「大脱走」に出てからであろう。脱走の計画を指揮する脱走王の役を、落ち着いた風格で、ただし厳しさは見せずに演じて、好感を残した。
 3年後には「砲艦サンパブロ」に出演。中国女性に恋に落ちる内気な水兵を演じて、観客を泣かせた。同作はイギリス・アカデミー賞の助演男優賞を受賞するが、翌年もまた「ドリトル先生不思議な旅」で同賞を受賞。二年連続受賞の快挙である。
 彼が演じたキャラクターのそのほとんどは脇役だったが、体格といい声といい目つきといい、独特で、インパクトが強く、イギリスではかなりの個性派だったと言える。
 最近は白髪にも貫禄が出てきて、「ジュラシック・パーク」からは髭をはやして、老けた印象も見せている。

●役者監督としては恐らく一番の実力者
 彼はとんでもない職業転換をした。監督になったのは、チャップリンの影響かもしれないが、とはいっても、彼の場合は役者業はきっぱりとやめている。役者が完全に監督業に転向した例は、ロバート・レッドフォードとアッテンボローの2人くらいしかいない。
 69年に発表したミュージカル「素晴らしき戦争」は、イギリスの名優が勢揃いし、コミカルに戦争を諷刺して、ボリュームたっぷり。日本でも高く評価された名作である。この成功が監督業に本格的に転向するきっかけになったのだろう。
 それからは、とにかく監督業一筋。「遠すぎた橋」でがイギリス・アメリカの名優たちをこれでもかと大勢起用し、アッテンボローの人脈の豊かさが見せつけられた。

●映画史に名を残す伝記映画作家に
 ノンフィクションを好む彼は、偉人たちの人生に常に興味を抱いている。彼の監督した作品のほとんどは伝記映画である。これほどまでに伝記映画ばかりを撮り続けている監督は他にはいまい。
 チャーチル、ガンジー、スティーブン・ビコ、チャップリン、C・S・ルイス、ヘミングウェイ・・・・。彼の伝記映画はどれもが批評家たちから絶賛されている。中でも「ガンジー」は8年間も企画を練って作った超大作で、アカデミー賞を受賞するなど、評価が高い。
 今後もアッテンボローは伝記映画の傑作を生みだしていくことだろう。僕もそこに期待している。
ガンジー


 フィルモグラフィ
63 大脱走
65 飛べ!フェニックス
66 砲艦サンパブロ
67 ドリトル先生不思議な旅
69 素晴らしき戦争(監督)
71 10番街の殺人
72 戦争と冒険(監督)
74 そして誰もいなくなった
75 ブラニガン
77 遠すぎた橋(監督)
78 マジック(監督)
82 ガンジー(監督)
85 コーラスライン(監督)
87 遠い夜明け(監督)
92 チャーリー(監督)
92 ジュラシック・パーク
93 永遠の愛に生きて(監督)
94 34丁目の奇蹟
96 ラブ・アンド・ウォー(監督)
07 あの日の指輪を待つきみへ(監督)


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