X-メン
X-Men

★★★1/2

<アメリカ/2000年/SF>
監督:ブライアン・シンガー
原作:スタン・リー、ジャック・カービー/音楽:マイケル・ケイメン
出演:パトリック・スチュアート、イアン・マッケラン、ヒュー・ジャックマン

 

●原作が気になって仕方なかった
 僕はこういうスーパーヒーローものがとことん好きなので、これを見たときには断然ゴキゲンになった。
 全米で40年間不滅の人気を誇っているベストセラー・コミックの、恐らく今回で初めてとなる映画化であるが、残念ながら僕はこの原作を一度も読んだことがない。僕がこの映画で一番気に入ったところは、キャラクターの独創性なのだが、となると映画スタッフよりも、キャラクターを創造したコミック原作者の方を褒めたくなってくる。
 もしかしたら、この映画版の方は、コミックと比べて、キャラクター性が薄れているかもしれない。僕が原作を読んでいないから比較できないのが残念だが、漫画芸術と映画芸術にかなりの共通点を見いだした僕としては、原作が気になって仕方がなかった。本屋にさっそく買いに行こうと思っている。

  

超能力で独創性を出す
 スーパーヒーローものというものは、西部劇と同じで、マンネリである。マンネリとは本来は悪い言葉であるが、正義と悪の壮絶な戦いを描くところは、良い意味で最高のマンネリズムだと言える。スーパーヒーローもののほとんどは、このマンネリズムの魅力に支えられている。ヒーロー漫画の作者たちは試行錯誤を繰り返して、この魅力を損なわぬように、新しい発想の作品を作ろうと心掛けてきた。
 「X-メン」だが、これはとても40年前の漫画とは思えないほど、キャラクターがユニークである。10人のミュータントが登場し、それぞれが独特といえる超能力を持っている。目を開けてしまうと強力なレーザー光線を発射してしまう男、自在に天候を操ることができる女、あらゆる鉄を思い通りに動かす力を持つ男などなど、テレビゲームにしたら受けそうなキャラが見ものだ。正義超人は美男美女揃いで悪玉超人は醜男醜女揃い。それぞれにボスがいて、ボスは見かけよりも凄いパワーを持っているというところもマニアック精神をくすぐられる。
 ここで面白いのが、そういう超能力が必ずしも自分に望むべき能力ではないということ。ローグという少女は、触れたものの生命を吸い取ってしまう。これは最強の超能力と言えるかもしれないが、彼女は永遠に肌で人の愛を感じることができないのである。超能力がトラウマになっているのだ。こういうマイナス面を設定するところが、この作品の独創性といえる。

 

じゃあ映画の良さは何?
 キャラクターの独創性だけがこの映画の魅力だとしたら、コミックを見た方がいいかもしれない。映画だけの魅力はないのだろうか? ある。
 独特の超能力を持つキャラたちが、障害物の多い地形で激しくぶつかり合う様は、予想もつかない破壊力たっぷりのアクションが展開し、見応え十分。このときの効果音が実に刺激的なのだ。超能力を使う場面などでは、ひずんだような変わった音がする。さすがにこの効果音は映画でしか楽しめない。

 

最後に一言:本気でおもちゃが欲しくなった

(第38号 「新作映画辛口批判」掲載)

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