ホワイトアウト
★★★1/2
<日本/2000年/サスペンス>
監督:若松節朗
原作・脚本:真保裕一/音楽:ケンイシイ
出演:織田裕二、松嶋菜々子、佐藤浩市
タネはあかしていません
●面白くなかったという人がわからない
割と友達の間では評判が悪かった作品だけど、僕としてはかなり楽しめた一本。いったいどこが面白くなかったのだろう。唯ひとり逃げのびた男が、テロリストを相手に戦う・・・、かっこいいじゃないか。雪山の映像もかなり気合い入ってるし、超大作アクションを作ってやるぞという制作者の意気込みが伝わってくる。
織田裕二も作品ごとにだんだんと顔がよくなってきたが、この映画でまた一皮向けた様子。みんなが期待している青島刑事の魅力を残しつつ、誰にでも共感しうる凡人ぽい英雄像みたいなものを醸し出している。彼はむしろスクリーンで見た方が様になるのかも。
●テレビ流のやり方ではなく映画流のやり方で
監督はテレビドラマのディレクターをやっていた若松節朗で、これで映画デビューとなる。
テレビドラマと映画とでは、ずいぶんと画面写りというものが違ってくるし、演出も異なるので、テレビから映画に飛び出した作品というのは大抵演出がテレビ流のままで、映像が場違いになってしまうケースが多いが、若松監督はよく映画らしい演出を勉強したようで、それらしく仕上げている。多少テレビチックなストーリーになっているのは否定できないが、編集の仕方やカメラ・照明の使い方などは工夫を重ねている感じがした。ゆえにヘリコプターからの空中撮影や、雪山での青白い色合いが生きている。VTRでは出せないフィルム独特の陰影もきちんと意識している。もう一つ、主人公とテロの立場を交互に見せる演出も、わざとらしくはあるが面白い。
若松監督も、これから映画作品が増えることになると思うが、とりあえずは第一作はかなりの大作として完成することができたので、今後も一安心だろう。
●ハリウッドの真似と言われたくないけど
ひとえにジャパニーズ・エンタテインメントとはいっても、日本流とは言い難い作品である。一見、ハリウッド映画の影響を受けているように思われるが、それでも真似と思われないように作ろうとはしている様子。一人だけでテロと立ち向かうという内容は「ダイ・ハード」や「エアフォース・ワン」などがあったし、そうでなくても「クリフハンガー」と比べてしまうと相当似ているのだが、頑張ってストーリーをひねって、意地でも違う映画に見せようとしているように思える。そのもがきが、この映画製作上のトラップ。大展開を見せるために、作者は悪役に裏を持たせることにしたが、それがかえって、この映画のテンポを破ってしまって、ラスト30分から楽しめなくしてしまった。ストレートに攻めてみても良かったとは思ったが、あんまりストレートすぎると、主人公がスーパーマンになってしまうので、そこを考慮して構成を歪めたのかもしれない。言ってしまえば、このひねくれ具合こそ、日本流なのではあるのだが。
とはいっても、映像のボリュームは大きく、気になる点も気にならなくなる出来映えではある。
最後に一言:どこかで見たような・・・見てないような・・・
(第32号 「新作映画辛口批判」掲載)