トゥルーマン・ショー
The Trueman Show
★★★★
<アメリカ/1998年/104分/コメディ>
監督:ピーター・ウィアー
出演:ジム・キャリー、エド・ハリス、ローラ・リニー、
ナターシャ・マケルホーン、ノア・エメリッヒ、ホランド・テーラー
注意:ネタをあかしています
●う、うっそ〜!!
僕はこの映画を全くの予備知識なしで見たので、かなり驚いた。最初の頃はいったい何がどうなっているのか、秘密にしているので、かなり興味をそそられた。中盤になって、ようやく事実が明かされる。
この作品は、生まれた時から毎日24時間ずーっと生活をテレビ中継されている男”トゥルーマン”を描いたコメディである。
これが、撮影されていることに本人は全く気付いておらず、何と彼の両親も妻も俳優で、町を歩いている人々もエキストラ、そして生活している町そのものも国が一つ入るほどの巨大な撮影用セットなのである。俳優たちはプロデューサーの命令で動いており、決してトゥルーマンに役者であることがばれないようにしている。トゥルーマンの人生は、入学・就職・結婚など、全てプロデューサーの脚本の思いのままに進行している。
このスケールのでかさが面白い。トゥルーマンの周囲のものは、空気から何もかも全てを偽物にしてしまうこの大胆なアイデア!! まさに”今”を感じさせるフィクションである。
●トゥルーマンの姿を見ていると泣けてくる監督は「いまを生きる」のピーター・ウィアーであるが、トゥルーマン役にすごい役者を抜擢してくれた。ジム・キャリーである。ウィアーは、突如映画界に現れた、この顔面が面白いだけのコメディ役者に、シリアスな演技を挑戦させたのである。結果は成功だった。
この映画のジム・キャリーは見ているだけで感動的だ。周りは友達も妻も両親までも、偽物で、友情も愛情も何もかもが偽りだなんて、考えただけで泣けてくる。結局自分の信用できる友達などは一人もいないわけで、彼の明るい顔をみていると、それが益々同情を誘う。(偽物の)父と巡り会うシーンもあるが、確かにあれは感動的で、泣かせるが、あのとき我々は果たして親子の再開に感動しているか? 違う。本人は大マジだが、父親は感動しているふりをしているだけの俳優。この違いが、泣けてくるのである。
異変に気付きはじめたトゥルーマンが、色々と変わった行動をとるあたりから一気に面白くなってくるが、それぞれのシーンはコミカルなようで、どこか残酷である。
クライマックスではトゥルーマンが、真実を求めて船出するが、この姿も感動的。抜け出せるわけがないのに、一生懸命になっている姿には、哀れみさえ感じてしまう。
ジム・キャリーもいいが、トゥルーマンを息子のような目で見守るエド・ハリスもまた素晴らしかった。
(第16号 「新作映画辛口批判」掲載)