タイタン A.E.
Titan A.E.

★★★★

<アメリカ/2000年/SF>
監督:ドン・ブルース、ゲイリー・ゴールドマン
出演:マット・デイモン、ドリュー・バリモア、ビル・プルマン、
ジョン・レイグザモ、ネイサン・レイン、ジャニン・ガラファロ

ネタをあかしています。

●CG画とデフォルメ画の合成は見た目よりも奥が深い
 素晴らしい。この映画はその一言である。正直、もう一度見たくなった。
 それだけこの映画にはのめり込める要因がある。何を隠そう、この映画は「ハマる」ための映画なのである。つまり、「なりきれる」映画なのである。
 この映画はアニメーションである。実写並の立体CG画像を駆使したアニメーションである。ただし、主人公たち登場人物だけがなぜか従来のデフォルメ・キャラのままだ。これを気に入らない観客が余りにも多かったようだが、本当はこの違いこそ、この映画の無限大の可能性なのである。
 それを説明するためには、漫画研究家のスコット・マクラウドのデフォルメ論を引用する必要がある。マクラウドが提唱したデフォルメ論とは、「写実的な絵はリアリティを増し、外部の世界を描くことに適す。その一方で、単純化された絵は内部の世界を描くことに適している」というもので、これを実証するのに「タイタン A.E.」が適しているとは言えないか。その意味では、「タイタン A.E.」は記念碑的アニメ映画の名作といいたい。
 アニメや漫画を見る場合、ときどき人は、単純化された主人公の絵を見て、自分の姿を自己投影してしまい、自分がまるで英雄になった気持ちになるときがある。この時、もしも背景が本物のようにリアルだとしたら、我々はもっともっと感情移入し、英雄になった気分を満喫するであろう。これを可能にしてくれたのが、「タイタン A.E.」なのだ。実写でも面白そうな映画ではあるが、やはりデフォルメした映像だからこそ、この映画の真の効果は発揮されている。
 宇宙を旅し、凶悪な侵略宇宙人たちと戦争を繰り広げる。この壮大な宇宙旅行を、自ら主人公となって、体感することができるなんて、素敵だとは思わないか。

  

●いかにもそれらしいストーリー。そこがいいのだよ
 序章の地球の爆発から鳥肌ものの映像である。とてつもなく大きい我等の地球が、巨大な爆発と共に散っていくこの映像の壮観ときたら、言葉には表せない迫力がある。日本アニメの影響だと思うが、こうもスケールがばかでかいと、快感さえ感じた。
 その後、主人公の持っている指輪が、宇宙の未来を救う「タイタン」の居所を示す地図だということがわかり、大冒険が開始される。色々な星を旅し、次々と危険な目に会う展開は、日米の往年の科学コミックのロマンを彷彿とさせ、これだけでも俄然嬉しくなる。
 よくできているのが、水素の木が生い茂る海の上の空中戦のシーン。木にぶつかれば爆発してしまう条件下で、スピーディな空中サーカスを披露しており、大いに楽しませてくれる。
 それと、雲柱が沢山並ぶ星で、主人公が宇宙船を豪快にかっ飛ばすシーンも楽しい。右に旋回左に旋回、雲を突き破って宙返りする映像は、ますますゴキゲンにさせる。
  この映画が各地で酷評された理由は、展開がありきたりだからなのだろうか? 僕としては、そのありきたりの展開が好きである。スペースオペラのそれらしい演出を再現して、幼心を呼び覚ましてくれるから、エキサイトさせられる。その感覚は、西部劇や時代劇が毎回同じ構成なのに、それでもゾクゾクしてしまうことと同じである。
 ぜひ漫画研究家の意見を請いたい。

  

●子供向きとはいってもねぇ
 最後に、少しばかり心残りがあるから、それだけグチを言わせてくれ。
 吹き替え版も同時上映していることから、子供向けの映画のようだが、そりゃ大のオトナには向いてないかもしれないけど、お子さまにもどうかと・・・。主人公がちょっとオトナくさい一面持ってるから、あんまり清らかなイメージがしないからね。これは、まだ幼稚なところのある大人にしか向かないかな(僕はそれに当てはまるから、向いてる)。
 ストーリーも深く考えると、いくつも無理な所を発見してしまう。敵は惑星ひとつふっとばす怪物なのに、なぜタイタンに恐怖を抱くのか? それにそこまで残忍なのに、どうして人質を生かしたまま投げ捨てるのか? ま、そこはアニメのお決まりだと思って、そういう細かいことは気にせずに、素直にロマンを楽しむのが礼儀ってものだろうがね。
 それにしても、ビル・プルマンが演っていた船長のキャラクターの設定の起伏が無責任過ぎる。うーむ、アニメとはいえ、もちーっと工夫して欲しかったね。
 あともう一つ、せっかく壮大な冒険ロマンを描いてるんだから、ロック音楽じゃなくてオーケストラ音楽をもっとかけて欲しかったなぁ。

  

最後に一言:みんながいくらコケにしようが、俺はこれを応援してみせるぞ。

(第29号 「新作映画辛口批判」掲載)



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