素晴らしき哉、人生!
<1946年/アメリカ> 製作・監督:フランク・キャプラ 出演:ジェームズ・スチュアート、 ドナ・リード、 ライオネル・バリモア、 トマス・ミッチェル、 ヘンリー・トラバース <第19回アカデミー賞> 最優秀作品賞ノミネート 最優秀主演男優賞ノミネート 最優秀監督賞ノミネート 最優秀録音賞ノミネート 最優秀編集賞ノミネート |
自信たっぷりのタイトル! この映画は凄い。タイトルは「素晴らしき哉、人生!」(It's a wonderful life)。こんなに自信たっぷりのタイトルが他にあっただろうか。タイトルに偽りのない、その通りの作品である。 僕はこれを見て、映画ファンになった。僕はこれを見て、「映画は人生の素晴らしさを教えてくれるものだ」と思った。この映画は人生の素晴らしさを謳った最高に幸せ気分なハートウォーミング・コメディである。 クリスマスを背景にした映画ゆえに、感動も倍増。アメリカでは本作は毎年クリスマスの日に必ずテレビ放送され、アメリカ人から最も愛されている映画となった。あのスピルバーグが一番好きな映画でもある。 ジミーの演技を見よ! 主演のジェームズ・スチュアートはアメリカでは最も人気のある俳優であるが、そうなれたのは、この作品に出演した所以が大きい。とにかくジミーの演技を見てほしい。僕はこの映画のジミーの演技よりも活気のある演技を見たことがない。演技とはこれ。後半30分間の演技力は圧巻。絶望の演技も上手いが、明るい演技はもっと素晴らしい。「メリー・クリスマス!」のセリフがこんなにも素敵なものだったとは。 思いっきり幸せなラスト! キャプラ・タッチ全開の「蛍の光」大合唱のラスト・シーンは、映画史上最も気持ちのいいハッピーエンドだといいたい。賑やかで、清々しくて、温かくて、愛があって、生きていることの感動に満ちあふれている。これが映画の素晴らしさだ。これが人生の素晴らしさだ。 キャプラは凄い! フランク・キャプラはハリウッドでは最も優れた映画作家のひとりである。この映画はストーリーそのものもいいが、よく見ると、演出にも細かい気配りがあり、深い。ちょっとしたワンカットにユーモアのセンスがある。タイミングは絶妙だ。 展開をスピーディにさせるためにカットつなぎだけで表現しているところはさすがである。例えば、映像を見ればわかる事柄は、セリフでは説明していないし、セリフで説明しているものは映像に描いていない。舞台でも小説でもない映画的な映像構築をさりげなくやっており、映像派の批評家たちも納得させる出来映えである。 「素晴らしき哉、人生!」はストーリー・演技・撮影・編集・音楽の全てが優れた限りなく完璧な作品なのである。 |
(第46号 「名作一本」掲載)