マトリックス
The Matrix

★★★★1/2

【R指定】
<アメリカ/1999年/135分/アクション>
製作:ジョエル・シルバー
監督・脚本:アンディ・ウォシャウスキー、ラリー・ウォシャウスキー
撮影:ビル・ポープ/音楽:ドン・デイビス
出演:キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン、キャリー・アン・モス

ストーリーのネタばらしはしていませんが、作風のネタばらしはしています。

●興行成績第位 「ロードショー」読者選出・人気ベスト1
 「マトリックス」は今年一番の話題作だろう。興行成績では全米第5位という数字だが、話題性では「スター・ウォーズ エピソード1」に次いで2番目に高かった。そりゃそうだろう、とにかくド派手な映画なのである。
 毎年「ロードショー」誌の4月号では、読者の選ぶ人気映画のランク付けが行われるが、これの1位になったのは「マトリックス」であった。いかにもトレンディーな読者の多い「ロードショー」ならではの結果である。

 

●「カリスマ」がポイント

 この映画のポイントは「カリスマ」。昨年の流行語である。香港カンフーをハリウッドでやっちまった「マトリックス」はまさしく「カリスマ・ムービー」である。その度を過ぎたぶっとび感覚は一度見たら癖になる。

 

●気迫で描くアクション

 とにかくスローモーションの描き方がド迫力で、ゆっくりなのに、恐ろしいまでの気迫のアクションを展開している。
 血なまぐさい西部劇やカンフー映画をパロディにしている感じがおおいに見受けられるが、ウーファ・スピーカーうなりまくりの破壊的なロック・ミュージックにのせてのドンパチ・シーン、重力を無視して壁を走り抜ける大袈裟な格闘シーンなど、カリスマ以外どう表現していいのかわからないぶっ飛び感覚である。
 スプリンクラーの水しぶきや、とびちる薬莢、コンクリートの破片などが、スローモーションで画面全体を包み込み、暴力的美しさを発散しまくっており、かつてのアクション映画の手法を逆手にとったことが、逆に凄まじい演出となって冴えている。

 

●世界観が見事

 僕はSF映画が大好きで、特に未来社会を描いた作品は、興奮しながら見ているのだが、この映画のSF社会の世界観には本気で恐れ入った。
 滅んだ世界を描いたところはSFの定石通りだが、セット・デザインは「ブレード・ランナー」を凌ぐ神秘で、空間的奥行きの恐怖というものがあった。
 ”マトリックス”とは、我々が生活している世界のことをいうのだが、実はこれが夢の中の仮想空間であり、我々はそれを現実と誤って認知していた、というのがこの作品のテーマである。すなわち、「五感で知覚できるものが全て現実だという根拠はなにもない」という哲学観がそこにある。
 また、オープニングから不思議な出来事を次々と展開させて、観客に何が起こるのか混乱・動揺させつつも、世界観の伏線はきちんとはってあるところも感心だ。
 キャッチコピーも、「なぜ、気づかない」というノストラダムス的ないいまわしをしており、世紀末の不安を持つ我々の興味を高めさせている。

 

●ただただ格好いい

 この映画はファッショナブルである。キアヌ・リーヴスも最高の着こなしだろう。サングラス姿がかっこいい。無敵の敵キャラも凄くイー感じだ。主人公がスーパーマンになりすぎたところは多少安っぽいかもしれないが、そのサイバーで大袈裟すぎる演出がかえって新鮮である。
 取りあえず、スカッと壮快のアクション・シーンだけは誰も文句をつけない面白さだ。

 

最後に一言:99年で一番はじけた映画

(第2号 「新作映画辛口批判」掲載)


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