菊次郎の夏
★★★★
<日本/1999年/コメディ>
監督・脚本・編集:北野武/音楽:久石譲
出演:ビートたけし、関口雄介、岸本加世子、
吉行和子、グレート義太夫、井出らっきょ、今村ねずみ
作風のネタをあかしています。
●たけしスタイル
北野武のロードムービーである。この監督はベネチアでグランプリを取った天才であるが、少しばかりこの監督にはスタイルがありすぎる気がする。
どの作品も基調はブルーだし、ジャン・リュック・ゴダールの影響なのか、ジャンプカットを多様している。
だからこれまでのスタイルを維持しているこの新作も、今までに北野映画から進歩が感じられない。が、面白いことには変わりはない。それだけ、たけしスタイルは我々のセンスにマッチしているということだろう。
恐らく、たけしは自由奔放にカメラを覗いていた。だから、静かな映像を見ていても、登場人物を自分が眺めているような気がする。
●絵になる4コママンガ
北野映画は雰囲気で見せる映画なのかもしれない。
やくざなおっちゃんと、純粋な少年の、親子にも似た交流を描いているが、このおっちゃんが少年に教えることが何もかも不器用でおかしい。そこをスケッチ風にユーモラスなタッチで描いているが、どのシークェンスも様になっており、4コママンガのような面白さがある。沢山のエピソードで構成される、アイデア満載の小品揃いだ。
射的で地面に転がっている石を投げあてるシーンなど、つい「うまいなぁ」っとため息。
個々の映像の持つ感性も素晴らしい。恐らく、テレビの音量をゼロにしても楽しめる映画だろう。
最後に一言:お手玉のシーンが最高
(第12号 「新作映画辛口批判」掲載)