ホーム・アローン
Home Alone
★★★★
<アメリカ/1990年/103分/コメディ>
製作・脚本:ジョン・ヒューズ/監督:クリス・コロンバス
撮影:ジュリオ・マカット/音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:マコーレー・カルキン、ジョー・ペシ、ダニエル・スターン、
ジョン・ハード、キャサリン・オハラ、アンジェラ・ゴーサルズ
注意:ネタをあかしています。
●現代版「素晴らしき哉、人生!」
「ホーム・アローン」は世界で大ヒットしたクリスマス映画である。
クリスマスの映画といえば、アメリカ人なら9割がた「素晴らしき哉、人生!」というが、実は「ホーム・アローン」は、ストーリーも構成も作りが「素晴らしき哉、人生!」に似ており、家族の温かさに満ちあふれる。だから受けたのだろう。
登場人物は善悪がはっきりしているが、善人側はそれこそ本当にいい人たちばかりで、見ていて心がぽかぽかしてくる。子供のために一生懸命になるお母さんの姿、それを見て人助けしてくれた優しいおじさん(今は亡きジョン・キャンディ名演!)、息子とけんかして寂しい人生を送っている物静かなおじいさん、なんていい人たちばかりなんだろう。
ラストシーンも「素晴らしき哉、人生!」風で、親子が再会して抱き合うシーンには涙がこぼれる。
ちなみに、家族がフランスで見ていたテレビ番組、これこそ、ものほんの「素晴らしき哉、人生!」である。
●子供がたくましく成長していく
この映画の主人公ケビンは小学2年生。家族に面倒ばかりかける問題児だ。ある日家族みんなから馬鹿にされたケビンは、「みんな消えてしまえ」と怒鳴ってしまう。そしたら、次の日、本当にみんなが消えていた、というのがこの映画のアイデアである。
始めのうちは、嫌な家族が消えて、ケビンは大喜びだったが、後からみんなのことが恋しくなってくる。そして今度は「クリスマス・プレゼントはいりませんから、家族を返してください」とお祈りするのだ。ケビンはこうしてたくましく成長していく。
炊事洗濯買い物なんでも自分一人でやり、怖かった暗闇も平気になって、ついには2人の泥棒を相手に大奮闘。この泥棒のストーリーは、あってもなくても、別段この映画のクオリティに変わりはないのだが、このストーリーを入れたことで、コメディ的エッセンスが加味され、親子で楽しめる映画となりえている。
この映画では、ときたまカメラが登場人物の視点になることがある。怖いおじいさんを見てびくびくしたり、別の家族が楽しそうにパーティしているのを見て寂しい思いしたり・・・。少年の視点から覗く他人というものは、実に興味深く、この映画もそこが面白く描けている。
●音楽がこの傑作を忘れられないものに
僕は、音楽も映画を大きく左右していると考えているが、そのいい例は、ジョン・ウィリアムズの作品である。「スター・ウォーズ」などを手がけた最大の映画音楽家であるが、この「ホーム・アローン」も素晴らしい。クラシックの国民楽派のスタイルを思わせるタッチで、一度聞いたら忘れられないご機嫌のクリスマス音楽を作り上げている。「ホーム・アローン」旋風はこの音楽との相乗効果で大衆に広がっていったといえよう。
ケビンが家族を想うときに流れる穏やかな曲も、クリスマスの夜の雰囲気がして、しみじみと感動的。
僕がこの映画で一番気に入っているシーンは、がらんとした教会で、おじいさんと会話するシーンだが、クリスマスの賛美歌は、どこか人の心を揺れ動かす美しさを持っていて、じーんときた。個人的に、クリスマスのこういう静かな雰囲気が僕はとても好きだ。
●これからもこういう映画を作ってくれ
「ホーム・アローン」を手がけたプロデューサーはジョン・ヒューズである。現代的な人情コメディに評価が高い。監督はクリス・コロンバスで、他に「ミセス・ダウト」でも家族の素晴らしさを描いている。「ホーム・アローン」は今時では少なくなってきた、家族で見られる人生のドラマだ。古き良きハリウッドに作られた作品の血を引き継いだ傑作だ。どうか2人にはこれからもこういう映画を作ってもらいたいものだ。
ところで、少年を演じたのはマコーレー・カルキンだけど、なんかハンサムな少年だね。過剰な演技も楽しくて、カルキン坊やはこの映画で一躍ドル箱スターになったようだ。
なお、好評につき、続編も2編作られたが、「ホーム・アローン2」は続編というよりも、再映画化といった方が良かった。
(第6号 「新作映画辛口批判」掲載)