ファンタジア/2000
Fantasia 2000
★★★★
<アメリカ/2000年/75分/アニメーション>
指揮:ジェームズ・レバイン、レオポルド・ストコフスキー
作風のネタをあかしています。
●60年の歳月を経て蘇る映像の祭典
クラシック音楽とアニメーションを融合させたディズニーの傑作「ファンタジア」は、実はシリーズみたいなものにする予定だったらしく、60年前から新作のアイデアは沢山出ていたそうだ。しかしなかなか実現することはなかった。が、ついに今世紀最後の年になってようやく完成したのである。
1940年の「ファンタジア」でも有名なミッキーマウスの「魔法使いの弟子」(デュカ作曲)の曲だけはそのまま残し、7曲の新曲を披露する。曲目はベートーベンの「運命」、レスピーギの「ローマの松」、ガーシュインの「ラプソディー・イン・ブルー」、ショスタコーヴィチの「ピアノ協奏曲第2番」、サン・サーンスの「動物の謝肉祭」、エルガーの「威風堂々」、そしてストラヴィンスキーの「火の鳥」。
曲と曲の間には、スティーブ・マーチンらスターが案内役として登場する。
●音楽が見える。映像が聞こえる。
”音楽が見える。映像が聞こえる” これが宣伝コピー。いい文句だと思う。だって、ほんとにそうなんだからね。
「ローマの松」の鯨には感動した。鯨の群がいっせいに飛翔するシーンの壮大さは、映像的な迫力が音楽の魅力を高め、鳥肌が立った。
この祭典を締めくくる「火の鳥」も素晴らしい。死と再生の物語だが、悲しいシーンの後、パーッと瞬く間に雰囲気を塗り替えていくラストシーンは、画面から飛びださんばかりの幸せに満ちており、余りにも美しく、言葉では表せない感動がある。このラストだけでも、見に来たかいがあったと思った。断然清々しい気分になった。
●結局は1940年「ファンタジア」・・・
やはり「ファンタジア/2000」も1940年の「ファンタジア」の呪縛から逃げられなかった。結局は1940年の無謀な真似に終わっている。できれば、もう少し練って欲しかった。
「運命」も1940年版の出だしのバッハと似ているし、ラストの「火の鳥」の構成もムソルグスキーの「禿山の一夜」と同じだ。「動物の謝肉祭」もポンキエルリのカバの踊りと大差ない。
「ラプソディー・イン・ブルー」だけが、画的にもアイデア的にも新しいが、ストーリーが音楽から離れて一人歩きしすぎている気がした。
「威風堂々」は好きな曲だから、なかなか面白かったが、これも映像性が強く、音楽とのバランスが揺らいでいる。
美術面なども、どこをとっても1940年版の方が良いようだ。僕は特に1940年版に漂っているムードが好きだった。曲のムードも好きだったし、あのシルエットになっている楽団の映像も好きだった。2000年版の方はスターたちが出てくるし、楽団の顔もはっきり見えるので、ムードが台無しになったと思う。
比較しなければ、悪いところなんて全くない映画なんだけどね。
最後に一言:ミッキーを大画面で見られたことが一番嬉しかった
(第12号 「新作映画辛口批判」掲載)