ダイナソー
Dinosaur
★★★1/2
<アメリカ/2000年/SF>
監督:ラルフ・ゾンダッグ、エリック・レイトン
注意:ネタバレです
●CG映像は噂どおり
小さい頃は図鑑でしかお目にかかることのなかった僕らの大好きな恐竜たちが、画面いっぱいにパーッと映し出されたときには、ワクワク感がどんどん高まっていく・・・かに思えたが、それは序盤だけだった。いきなり動物たちが人間語を喋った瞬間から、男たちの夢がプツンと消えて少し白けてしまうのだが、ただしそこからは、ディズニーらしいアニメ映画として別の意味で楽しむことはできる。
アニメチックな恐竜になってしまったのは仕方がないが、依然CG映像は素晴らしく、皮膚の色や筋肉の動きなど、驚くべき映像進化を遂げている。背景は実写だが、灼熱の砂漠のかなたにむかって地上わずかに生き残った最後の恐竜たちが、ひたすら前進していく様子は、何とも言えない感動がある。
肉食恐竜と草食恐竜の生死をかけた争いが描かれているところは、男の子にとってはたまらないことだが、この映画では血がとびちりそうなくらい凄まじいバトルを繰り広げてくれて、特撮ヒーローものの味付け満載でゾクゾク。草食恐竜を人間ぽく描いて、肉食恐竜をまるでモンスター扱いにしたところは、自然な成り行きではあるが、この肉食恐竜が何しろ本当に怖いのである。怪獣ぽく文字通りガオーと吼える肉食恐竜のクロースアップは鳥肌ものだ。
●子供映画には人生観がある
ハリウッドの娯楽映画は、テーマが空っぽのものばかりだが、なぜか子供映画となると、人生観が見えてくる。多少説教ぽく教訓が描かれるのだ。子供たちには直接教訓を語るのがてっとりばやいからだろうか。だから大人がこういう子供映画を見ると、妙に説教されている気分になってしまうのだが、失っていた闘士や希望を思いださせてくれる。
この映画は恐竜たちのドラマである。これが人間だったら、陳腐な映画だが、恐竜だと映像的に興味深いので、最後まで見ていられる。だからこそ、この映画にこめられたメッセージに耳を傾けられるのだ。そして、恐竜を人間のように描いているからこそ、普遍的な人生観を描くことができたのだ。洞窟に閉じこめられてからのシークェンスなど、とてもじーんとくる。ラストで群のボスが死んでしまうのは確かにいただけないが、子供たちはそんな細かいことを気にしたりはしないだろうし、とにかくここは主人公のポジティブな行動力だけを記憶にとどめておこうではないか。
最後に一言:ディズニーなのに歌はなしか
(第46号 「新作コーナー」掲載)