コップランド
Cop Land
★★★1/2
【R指定】
<アメリカ/1997年/105分/社会>
監督・脚本:ジェームズ・マンゴールド
撮影:エリック・エドワーズ/音楽:ハワード・ショア
出演:シルベスター・スタローン、ハーベイ・カイテル、
レイ・リオッタ、ロバート・デ・ニーロ、アナベラ・シオラ、
マイケル・ラパポート、ロバート・パトリック
●まず嬉しいのがこの配役
この作品ばかりは、まず最初に出演者に注目してしまうだろう。シルベスター・スタローン、ロバート・デ・ニーロという異色の顔合わせである。スタローンはこの映画のためにデ・ニーロよろしく、体重を16キロ増量して出演している(鼻の傷がまた彼らしくていい)。2人の他に、ハーベイ・カイテル、レイ・リオッタという個性溢れる役者たち。それでいて映画の方は警察の汚職を描いた社会派サスペンス。批評家受けもいい傑作である。
●作家性を感じさせないのに傑作
名前の知られた監督の作品は、どれも独特な作家性が表れて当然である。ところが、ハリウッドの場合、ビジネスで映画を作っているので、そういう作家性のない映画が多い。
この映画の監督はジェームズ・マンゴールドだが、この映画はなぜか”監督”の存在を感じさせない。出演者が濃厚という理由もあるが、作り方はいたって丁寧であり、構成も実に整理されているので、雇われスタッフたちが職人芸で完成させたような印象を受ける。そう感じさせる緻密さが逆にマンゴールドの素晴らしいところなのかもしれない。恐らく古いアメリカ映画を研究したのではないだろうか。
個々のシーンだけを見ると、いかにも「マニュアル通りに撮りましたよ」という正統的な演出をしているのだが、この映画は、ストーリー進行が今までになかったような展開で組み立てられているので、何か大作を見せられた気になる。作家性を感じさせない商業映画なのに傑作という理想体である。これはビクター・フレミングやスティーブン・スピルバーグにも共通する。今後、娯楽監督として、マンゴールドに多いに期待が持てそうだ。
ただし後半、難聴のスタローンが、敵のアジトに捨て身の覚悟で乗り込んでいくシーンは、マンゴールドのアイデンティティ表示とも言え、彼独特のカッティング技術を堪能できる。スロー映像によるアクションのタイミングはなかなかのものだ。
(第15号 「新作映画辛口批判」掲載)