救命士
Bringing Out of the Dead

★★★1/2

【R指定】
<アメリカ/1999年/社会派>
監督:マーチン・スコセッシ/脚本:ポール・シュレーダー
撮影:ロバート・リチャードソン/音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:ニコラス・ケイジ、ジョン・グッドマン、トム・サイズモア、
ビング・レイムス、パトリシア・アークェット

ストーリーのネタはあかしていませんが、作風のネタはあかしています。

●救急車版「タクシードライバー」
 マーチン・スコセッシの最新作である。ここ数年、スコセッシの作品は大した話題になっていなかったが、今度という今度は話題性十分である。何しろ「タクシードライバー」ポール・シュレーダーが脚本を手がけた作品だ。そりゃ期待もでかい。
 ところが、この映画は、あまりにもタッチが「タクシードライバー」になりすぎてしまっていた。カメラの視点が運転手の視点となり、薄汚い町並みを横スクロール映像で捉える例のあの手法。これじゃ二番煎じだ。とはいっても、そのユニークな演出は、たとえ二番煎じになってしまっていても、やはり見応えがある。

 

●ちょっとやりすぎスコセッシ先生
 主人公はトラウマを持っている。救命士でありながら、一人の少女の命を救うことができなかったことが、どうしても頭から離れない。その辺の演出が、スコセッシ先生、ちょっとやりすぎなんじゃないかってくらい異常に描かれている。しかしその描写力は絵画的芸術も感じさせる。周囲の人間が死なせた少女に見えてしまうあたりからも、この映画にシュールさを感じとることができる。
 この映画では3つのコメディが楽しめる。救急車に一緒に乗る相棒が3人いて、主人公は相棒を1人ずつ相手に、おかしくも、深く考えれば実に深刻な騒動を繰り広げる。ここら辺の演出もスコセッシ先生ちょいと、はしゃぎすぎじゃないかと思えてくるが、いつものように、ご機嫌のロック・ミュージックにのせてテンポよく描いているから許せちゃう。今回は特にヴァン・モリスンのブルースが渋かった。
 結果的には、独創性に欠ける作品だったと考えるが、それでもスコセッシ先生の演出だから、十分に楽しめた。

 

最後に一言:スコセッシは夜の都会が大好き

(第8号 「新作映画辛口批判」掲載)

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