今週のスター 

No.121
ケーリー・グラント
Cary Grant (1904〜1986)

 ケーリー・グラントはこの顔しかない

 顔つきは、完璧な紳士と表現されたほどで、とくに唇が魅力的で、キスのうまい役者だった。またどことなく間抜けそうなところが好感度が高かった。だからこそ、ハリウッド・ロマンチック・コメディの3大フィルムメーカーであるジョージ・キューカー(「素晴らしき休日」)、ハワード・ホークス(「赤ちゃん教育」)、フランク・キャプラ(「毒薬と老嬢」)の3人の傑作にも出られた。とくにホークスには可愛がられ、ホークスの代表的コメディのほとんどに出演した。
 ときには
「ガンガ・ディン」など痛快冒険劇に出て飛び回ったりもしたが、ユーモアは決して忘れなかった。老けてきてからも、「ミンクのてざわり」「シャレード」「がちょうのおやじ」など、ロマンチック・コメディだけに出た。こういう役しかもらえなかったのも何かの才能だったのかもしれない。それでいて彼は世界中に愛された。

 
「断崖」「汚名」「泥棒成金」「北北西に進路を取れ」・・・あのアルフレッド・ヒッチコックもグラントを可愛がった監督のひとりだ。ヒッチはグラントをケーリー・グラント像そのままにサスペンスに起用し、ロマンチックな洒落っけを作品へと味付けした。
 
 グラントは実はイギリス人だが、アメリカで最も人気のある俳優の一人であった。とにかく、いかにもハリウッドぽい役者であった。ハリウッドぽい映画にしか出てないし、出演作は何もかもが笑劇。シリアスものやコスチューム・プレイはたぶん全然やっていない。アカデミー賞には全く縁がないが、セレモニーにはよく顔を出し、会場を盛り上げていたという。
 彼は俳優の生涯を通してずっとこの顔を変えることなく、いつも髪型もおんなじで、世間一般の抱いているケーリー・グラント像を守りつづけた。
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