今週のスター

ローレンス・オリビエ

No.043
ローレンス・オリビエ
Laurence Olivier(1907〜1989)

 今世紀最大の映画俳優

 オリビエはイギリス最大の映画・舞台俳優である。映画人として初めてサーの称号を受けたのも彼だし、当然ナイトの爵位も彼が初である。イギリス映画のみならず、ハリウッド映画でも印象的な演技を残し、アカデミー賞演技部門の候補回数は史上最多。監督としても見事な手腕を発揮しているが、「ハムレット」など、シェイクスピアを作らせたら右に出るものはいない、まさに映画史上最高の実力者であった。


 イギリス流の演劇的パフォーマンス

 もともとシェイクスピア役者としてスタートしているので、主作のほとんどはシェイクスピア映画なのだが、さすがにシェイクピア劇独特の英国気質溢れる演劇的演技が映画にも引き継がれている。堂々とかまえて腹から太い声を出し、怒るときにはそれこそ全身から怒りを表現し、悩むときにはとことん悩んでいる様に見せる。下手すれば大袈裟な演技に受け止められてしまいそうだが、そこら辺はきちんと抑えて、コクのある容姿がスクリーンへと溶け込んでいく。彼は演劇という範疇を自然にトーキー映画へと結合させた俳優なのかもしれない。


 気品ある傑作の数々

 イギリス人はアメリカ人に比べて、何かノーブルな気品を感じさせるが、オリビエもまさにそれである。だからいかにも英国紳士ぽい役や、貴族や王族の役、ついにはゼウス役など、そういう役が多かったような気もしないでもない。ホームズ・ファンなら知っているモリアーティ教授役の経験もあるが、中には「マラソンマン」のようにとんでもないヤバ目の悪役もあった。
 それにしても彼の出演作には本当に傑作が多い。「ヘンリィ五世」などのシェイクスピア映画から、「嵐が丘」などの文芸大作を得意とし、わりとコミカルな役など何でもこなしつつ、「スパルタカス」「リトル・ロマンス」では脇役なのに誰よりも目立つ演技を見せており、印象的だ。
 僕の個人的なお薦め作は「ブラジルから来た少年」である。日本未公開映画だが、かなり面白い映画である。老いたオリビエじじいが、よれよれながらもナチの残党と戦いを挑むサスペンスで、老いぼれっぷりが最高だった。彼が貧弱に演じていたからこそ、スリルのある映画だった。


 ちなみに、詳しくは知らないが、彼は2度目のアカデミー賞特別賞を受賞したときのセレモニーで、最良といえる素晴らしいスピーチを残したという。

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