タイトル
男はつらいよ 奮闘篇
公開年
1971年4月28日(第7作目)DVD
ゲスト
榊原るみ、田中邦衛、柳家小さん、光本幸子
ストーリー1
寅の母がとらやにやってきて大騒ぎ
ストーリー2

知恵遅れで身よりのない少女が寅を頼りにやってくる

解説

本作は「保護者」についてがテーマである。開巻で集団就職する青年たちを見た寅が「親も好んで貧乏やってるわけじゃねえんだよ」と説教たれるのはテーマの伏線になっている。第2話で登場した寅の母も今回再登場し、保護者というものが何かについて問いかける。寅と母が喧嘩しているとさくらが寅を弁護したことからも、寅の真の保護者はさくらであることがわかる。さくらは寅の破けたふんどしを縫ってくれる優しい妹であり、時としては本作のように、寅を追いかけて自分が旅に出ることもある立派な保護者なのである。
今回おもしろいのは、寅も保護者の立場に立つということ。保護する人が知恵遅れの少女というのがおかしいところで、寅の奮闘ぶりがコミカルに描かれる。榊原るみは一目見て知恵遅れだとわかるほど役にハマっている。
本作はテンポがよく、台詞もユーモラスである。喧嘩のきっかけも「屁」が原因というのがおかしく、寅は何かと屁にこだわる男ゆえに、この喧嘩シーンはシリーズの中でも際立って面白い。ミヤコ蝶々の演技もうまい。これだけ至れり尽くせりの傑作なのに、本作は見終わった後、何か不完全燃焼のようなものを感じさせる。その原因は、エピローグが長すぎたからではないだろうか。シリーズの伝統としては、寅が家を出て湿っぽくフェードアウトした後、短いエピローグで明るく盛り上げるところだが、本作では寅が家を出るときにわだかまりを残すために(なんと寅がさくらを殴る)、エピローグをもっと長くしてそのわだかまりを解いておく必要があった。しかし肝心のエピローグが暗すぎたために、落ちの明るさが気力負けしていて、いつもの爽快感に欠けるのである。実に惜しいことである。

名台詞
寅の母「さくらちゃん、あんな出来損ないの子をそないまで思ってやってくれて、おおきに」

週刊シネママガジン