「独立」という明確なテーマが打ち出されているために、ぐっと話が引き締まっている。寅も故郷があるから一人前になれないことに気づくが、そのときフラッシュバックする家族たちの静止映像が感動を呼ぶ。独立しようと思うことで余計に家族たちの思いが募るのである。
今回の喧嘩の場面は、行き過ぎかとも思われる。博は独立したくて寅に相談し、社長は博をとめるために寅に相談する。寅は同時に二人から正反対のことを頼まれて、結局二人の約束を破る。いくらギャグとはいっても前半で貧しい女に献身して寅の人情性を誇示した後に、この始末では気持ちよく笑えないだろう。しかしその修羅場の後に「タコタコあがれ」の一言だけで見事に締める演出力は褒めておきたい。
タイトルバックで柴又を俯瞰撮影していることにも注目。
本作では社長の女房が出てくるが、台詞だけ出演の他の作品とは違って今回は画面内に映る。あけみらしき少女の姿も見える。
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