タイトル
男はつらいよ 寅次郎物語
公開年
1987年12月26日(第39作目)DVD
ゲスト
伊藤祐一郎、秋吉久美子、五月みどり、松村達雄
ストーリー
小さな少年が郡山からはるばる寅を訪ねてやってくる
解説

ある意味「男はつらいよ」シリーズの様式美は、これ一本で頂点を極めたといってよいだろう。シリーズ中最も洗練の利いた作品であり、サブタイトルが示すとおり、本作はまさしく「寅次郎」そのものである。「旅」そのものを描いている作品にして、これだけは特別に旅の「目的」が生じていることも重要である。実質上、寅の時代はこれにて終止符を打つことになる。最後に寅が満男に「そのうちおまえにもわかるよ」と人生訓を言い残して去るように、42話から寅に代わり満男が作品の中心人物となるわけだが(間に作られた40話、41話はシリーズの番外編みたいなものである)、寅の時代が終わるにあたって、山田はこの一本を作ったことで、悔いはなかっただろう。それだけ39話の完成度は高いのだ。
言ってみれば、寅はハードボイルド映画のスターに近い。寅をチャップリンと比較する動きは以前からあったが、むしろ、このダンディズムはハンフリー・ボガートと比較する方が的を射ているだろう。本作では寅のダンディズムが一貫して誇張の中に描かれているため、いきなり本作だけを見ると、気取りすぎているように見えるかもしれないが、シリーズ全体を通してみれば、ついに来るところまで来たかと、感慨深い気持ちにさせる。マドンナとのやりとりについては、マドンナの寝床から「逃げられなかった」寅の動揺ぶりが微笑ましいが、それ以外では、今までにないストイックさが漂う。寅が落ち着いている分、脇役の演技のリアクションがいつにも増して強調されており、おかしみたっぷりだが、シリアスとコミカルを紙一重とする山田流の人情喜劇は、たとえ寅が今後いなくなろうとも、健在であることを予感させる。

名台詞
「おまえ、隣のかあさん好きだろ?ん?」

週刊シネママガジン