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解説
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32話では、仏教を喜劇に仕立てたが、今度は思い切ってキリスト教をネタにしてみせた。マドンナがキリスト教信者ならば、寅は何も悩むことなく、キリスト教へと改宗する。純日本的なシリーズなだけに、どこかミスマッチな西洋臭さが、適度なユーモアになっている。
本作から寅の相棒のポンシュウが本格的に登場する。二人の性格は対照的に描かれ、ポンシュウのスケベっぷりを強調させたことで、寅のピュアな恋心がますます際立ってきた。以後、二人のこういった対比が、シリーズに定着していくことになる。
33話で結婚したばかりのあけみが、もう倦怠感を抱いていることにも注目である。しかし寅はいつまでも青年のような恋心を抱き続けている。現実的なあけみと、ロマンチストの寅の対比である。寅人気の秘訣はここに隠されている。
本作のハイライトは、平田満がマドンナに惚れていることを、マドンナ自身も気づいていることである。寅もそのことにはショックを受ける。二人は全然会話をしていないのに、マドンナはちゃんとわかっているのだ。寅は自分の愚かさにようやく気づき、自分もマドンナからそのように思われるのが怖くなって、身を退くことにする。わざと自分は最初から二人の幸せを願っていたようにカムフラージュするのである。そこが寅のつらいところである。
もうひとつ、寅と似たもの同士の平田満が、見事マドンナのハートを射止めたこと。寅はいつも甲斐性なしという理由で振られてきたが、寅よりも全然頼りない男が、どうしてたった一日のデートでマドンナのベッドに誘われるのだろうか。これはできすぎた結末であり、賛否両論別れるところだろう。 |
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