タイトル
男はつらいよ 寅次郎真実一路
公開年
1984年12月28日(第34作目)DVD
ゲスト
大原麗子、米倉斉加年
ストーリー
寅が飲み屋で証券会社の課長と知り合う
解説
寅がついに人妻に恋をする。第6話で夫と別居中の人妻に惚れたことはあったが、友人の妻を好きになるのはこれが最初で最後である。禁断の愛というわけだ。
見どころは、いけないことと自分に言い聞かせつつも、じわりじわりとマドンナにひかれていくことである。電撃にうたれたように恋に落ちる他の作品と比較すると、本作の寅はストイックであり、ゆるやかな右上がり傾斜になる心理変化の過程を、ゆっくりと見物することができる。
寅とマドンナが旅館の一部屋に二人きりになるシーンは圧巻である。罪だと思っていても、人妻をモノにしたいという願望は、当然寅の中にもあるわけだが、ここでどのような態度をとるかが問題である。マドンナも、寅に下心があることを承知していたはずである。もし、同じ直面に立たされたら、普通の男ならどうするだろう。チャンスとばかりに人妻と肉体関係を持つかもしれない。しかし寅はこの場から立ち去った。どちらが「男」と言えるのか。どちらが「真実」と言えるのか。
相手は友人の人妻である。義理堅い寅は男の友情を選んだ・・・。いいや、寅はこのとき友人のことは考えていなかった。本当はマドンナを抱きしめたかった。だが、ここで言い寄ってみたとして、軽蔑されるのではないかというおそれがあった。臆病風に吹かれた寅は、下心のない真面目人間を装って、逃げ出すしかなかったのだ。この結果は29話の夜のシーンにも似ている。
ただ、寅が一度だけ、ためらいながらも思い切ったようにマドンナの肩をさわるシーンがある。この行為が、寅がここでできた精一杯のセックス・アピールだったのだと考えるべきである。
もしここで、マドンナの方から寅の体を求めてきたら、寅はどういうリアクションを見せるのだろうか。その答えをはじきだすには、本作の公開から、あと7年待たねばならない。
名台詞
さくら「帰ってこないと思う。お兄ちゃん、そのまま旅に出るんだと思う」

週刊シネママガジン