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解説 |
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面白い作品ではあるが、どうしても他のシリーズ作品のように好きになれないのは、負の要素が多すぎるからだ。久しぶりにペーソスたっぷりの音楽を使っているが、寅の性格までも陰気になってしまっている。佐藤B作が出演しているが、金をマドンナに貸さなかっただけで寅に突き飛ばされる始末で、結局最後まで彼は救われることはない。これがシリーズ特有の「後味の良さ」にしこりを残すのである。
寅がシリーズで唯一本気でマドンナにどなっていること、良いようにやったことが裏目にでるやるせなさ。そういうストレスが、観客の期待する落語的面白さに相反している。
シリーズで大切なのは、寅とマドンナの二人のやりとりであるが、本作にはもう一人、余計な男性キャラが割り込む。これがとても共感できるキャラクターではない。キザ男は、シリーズには招かれざる人物なのである。
ヒューマンドラマとして見れば、よくできていることは間違いないが、いつもの寅を望んでいたファンにとっては、別の映画を見せられているようで、肩すかしを食らう一本だ。 |
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