1作目と比べて、こちらはずいぶんとスローな展開になり、寅次郎のキャラクターも優しい人間になった。映画としてのキレ、まとまり、テンポの良さでいえば1作目の方が完成度は上だろうが、寅の人情味にスポットを当てた点では2作目の方が興味深い。これほど号泣する寅次郎の姿を見ることができるのは本作一本しかない。1作目と同じく、またしても寅は手痛い失恋を経験することになるが、本作では珍しく部屋の中でひとり男泣きしているところをさくらに見られてしまう。涙を見られる前に旅に出るのが寅のダンディズムだとすると、まだ本作の段階では寅のダンディズムは完成していないわけだが、いずれにせよ、ここで寅が人一倍涙もろいことを示しておいたのは正解だった。だからこそ、その後の作品の寅の後ろ姿に、涙をこぼす寅の顔を想像させるのである。シリーズの悲哀の原点がここにある。
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