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解説
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最終回かと思われるほどの大作であった25作目の次に作る作品とあって、幾分かプレッシャーはあったのではないだろうか。察するに、あの25作目よりも面白い作品を作るためには、頭から脚本を練り直すしかなかったのではないか。前作であれほどの大恋愛をした寅ゆえに、今度はちょっとした恋愛物語では観客が満足してくれるわけがない。それならばいっそのこと恋愛から離れて、恋愛の要素の少ないヒューマンドラマを作ろうではないか。そうして書いた脚本が、定時制高校をテーマにした本作である。恋愛を期待していた観客にしてみれば少し物足りない話かもしれないが、伊藤蘭ちゃんの可愛い演技も見られることだし、別に寅があの名調子を聞かせてくれなくなるわけではないので、それなりに面白い作品である。改めて見てみると、とても良くできた自立映画であることもわかってもらえるだろう。
ちなみに、本作では初めて寅の履歴書が画面に映るが、生年月日を見てみると昭和15年生まれになっていることがわかる。本作が作られたのは昭和55年なので、寅はこの時40歳になる。しかし2作目で寅は確かに自分は38歳だと言っていたし、18作目では40うん歳になったと言っていたはずである。それなのにこれはどういうことだろう。つまり寅は全く年を取っていないことになる。そういえば顔も昔と全然変わってないし、衣装も毎回同じだ。よく考えるとおいちゃん、おばちゃん、タコ社長も昔からずっと変わらない。おそらく、これが「男はつらいよ」の長寿の秘訣なのではないだろうか。「サザエさん」や「ドラえもん」だって永遠に成長しないが、だからこそ、安全にシリーズを続けていられるのかもしれない。寅もそれと同様で、車寅次郎というキャラクターをいつまでもあのままで守り続けていたから、安全に48作までやってこられたのだろう。 |
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