タイトル
男はつらいよ 寅次郎純愛詩集
公開年
1976年12月25日(第18作目)DVD
ゲスト
京マチ子、壇ふみ、浦辺灸子
ストーリー1
満男の学校の先生が家庭訪問でとらやにやってくる
ストーリー2
寅がドサ回り一座のみんなと再会する
解説
とにかくこれは大女優京マチ子様々。それに尽きる。京マチ子はあらゆる意味において異色だ。唯一人渥美清よりも年上のマドンナであり、人生のほとんどを病院で過ごし、最後には死んでしまうという最も不幸なマドンナを全編コミカルに演じてみせる。14作目の十朱幸代、17作目の太地喜和子、21作目の木の実ナナなど、コメディリリーフに回ったマドンナは他にもいたにはいたが、京マチ子ほどおかしな個性を出していた者はいない。渥美清との息もぴったりで、二人が会話している光景は幸福に満ちている。京マチ子は寅と初対面するシーンから、言葉の口調といい笑い声といい、うますぎで、彼女がどんな役でもこなせる名女優だということを再認識させられるだろう。芯が強く、ハリウッド映画でも芸者役で大いにアメリカ人を笑わせた実力派だから、こういう役でも貫禄がある。
マドンナが死ぬという意味では、ここまで悲劇的な作品は類がなく、寅が他ではあり得ないくらいマドンナと親密な仲になるのがなおのこと悲しさを増大させる。ラストで寅がマドンナと自分の将来について本気で考えていたことを語るシーンのこの感動は、本作だけにしかないものである。
ところで、死をテーマにしたこの作品に、あえて宗教にまつわるギャグをとりいれていることもひとつの見所である。宗教的なことを描いても少しも重苦しさがないところは日本の映画ならではである。
名台詞
「僕が満男にどれほど夢を託しているか。子供を持ったことのない兄さんにわかってたまるか!」

週刊シネママガジン