タイトル
男はつらいよ 私の寅さん
公開年
1973年12月26日(第12作目)DVD
ゲスト
岸恵子、前田武彦、津川雅彦
ストーリー1
おいちゃんたちが熊本に旅行するので寅が留守番することになってさあ大変
ストーリー2
小学時代のクラスメートと再会。彼に美人の絵描きの妹がいたからさあ大変
解説

シリーズで最もヒットした作品である。たしかに本作の出来栄えは素晴らしい。生きていくことは、ただ食べていくことだけじゃないのだというさりげないメッセージが込められていることと、寅とマドンナのロマンチックな恋物語など、見どころが多く、シリーズの中でも上位にランクインしてよい傑作である。
なんといってもベテランの国際女優岸恵子が初めてコメディに挑戦しているところが嬉しい。岸恵子の演じるマドンナは、本当に愛くるしかった。洋装で花束がよく似合い、「男はつらいよ」の世界観にぴったりとマッチしていた。とらやで寅と再会するシーンや、寅の耳もとでささやくシーンの茶目っ気はたまらなく魅力的であった。
今回は寅とおいちゃんたちの立場が逆転して、寅が留守番をすることになるが、寅が心配でいてもたってもいられなくなるところが面白い。本作の寅は以前までの作品と比べてみても、なんだか妙に可愛らしいところがある。マドンナが絵を描いている横でご機嫌そうに体を揺らしている姿は、まるでチャップリンのような無邪気さがある。本作の寅はとても優しく、子供のように無邪気なのである。だからこそ最後の風の吹く中の別れのシーンがとかくかっこよく映るのである。渥美清の演技にも活気を感じさせる。寅というキャラクターから余計なものがはがれ落ちて、寅の人間的魅力だけが残ったという感じである。まぎれもなく本作の寅は車寅次郎その人である。
なお本作で満男がついにちゃんとした台詞を喋る。

名台詞
「長旅をしてきた人は、優しく迎えてやらなきゃあな」

週刊シネママガジン