処女の泉 16世紀のスウェーデン。神聖な儀式のために、山ひとつ越えたところにある遠い教会に一人で行くことになった世間知らずの生娘が、途中3人組の追いはぎに殺され、身ぐるみを剥がれる。その事実を知った父親は、身を清め、追いはぎに復讐する。
 仄暗い火の光に照らされた暗い夜の映像が素晴らしい。黒白のスタティックな映像美の中に中世スウェーデンの様式を崇高なタッチで描き上げて、これぞ北欧映画芸術の到達点である。無神論者だったといわれるベルイマンは喜劇映画監督だが、どちらかというとこのような信仰に疑問を投げかけた内容の宗教映画の方に真価が発揮される。→DVD

この年、アメリカではJ・F・ケネディが大統領に当選。史上最年少の大統領となり、若者文化が発展。まだ映画には若者文化らしさは見られないが、この世代の若者たちが、後にニューシネマの監督となる。
この年は70ミリ映画が目立つ。「キング・オブ・キングス」、「栄光への脱出」、「スパルタカス」などが作られた。一方アルフレッド・ヒッチコックはモノクロで「サイコ」を発表し、ビリー・ワイルダーは「アパートの鍵貸します」を製作し、カラー映画とモノクロ映画の勢力はこの当時は互角といってよかっただろう。
海外ではフランス勢とイタリア勢の対決ぶりが面白い。フランスからは「素晴らしい風船旅行」、「ラインの仮橋」、「地下鉄のザジ」、「雨のしのび逢い」が作られ、イタリアからはフェリーニの「甘い生活」、デ・シーカの「ふたりの女」、ロッセリーニの「ローマで夜だった」、ヴィスコンティの「若者のすべて」と四大巨匠が出そろった。アラン・ドロンはイタリアで「若者のすべて」、フランスで「太陽がいっぱい」に出たが、この2作は共にフランスとイタリアの合作である。
日本では「おとうと」と「悪い奴ほどよく眠る」が公開。日本からも大島渚という和製ヌーベルバーグが巻き起こった。
 

ジャック・レモン
「アパートの鍵貸します」に出演。アカデミー賞は取れなかったけれども、ビリー・ワイルダー監督とのコンビネーションは相変わらず絶妙である。

アラン・ドロン
「太陽がいっぱい」に出演。このときまだ24歳だったが、凛々しい美貌で一躍美形スターNo.1となる。
モーリス・ベジャール
フランス出身の舞踊家・振付師。この年ベルギー・ブリュッセルで20世紀バレエ団を結成。20世紀バレエ団は、やがてその名に偽りなく、20世紀で最も重要なバレエ団となる。
1. ベン・ハー
2. サイコ
3. ペティコート作戦
4. 去年の夏突然に
5. 渚にて
2006年1月4日