週刊シネママガジン特別企画名言集ピーター・ウィアーの言葉

ピーター・ウィアーの言葉

ピーター・ウィアー

ある日本人陶芸家との出会いが私を変えた。
その人は、一流の技術を持っているのに、自分の作品にサインをすることがない。生活道具として使われることに誇りを感じるんだそうです。彼と会うまでは、私はアーティストになろうとしていた。しかし、今は観客が楽しんでくれれば、自分がアーティストかどうかなんて、どうでも良くなったんです。
(朝日新聞)

 

<解説>
「トゥルーマン・ショー」「マスター・アンド・コマンダー」など、1作ごとに異なるジャンルに挑んでいるオーストラリアの巨匠ピーター・ウィアーのあまりにも意外な言葉である。
アーティストの卵たちは、自分の名前がクレジットされることを夢みて、一所懸命に自分を売り込もうと努力する。名声のためなら、悪魔に魂を売ってもかまわないという人だっている。ところがピーター・ウィアーは、自分の名前なんてどうでもいいというのである。要は、観客は名のある監督の作品を見たいんじゃなくて、単に良い映画を見たいだけだということだ。スピルバーグ製作総指揮、コッポラ製作総指揮など、フィルムメーカーのブランドイメージばかりを追いかけていた映画ファンたちが、ハッと我にかえる言葉である。

2005年1月1日