当サイトでは、何週か前に「世界一美しい女優」としてヴィヴィアン・リーを紹介したが、その意見に反発のメールを寄せてきたのがドヌーブ・ファンの方々だ。「いやいややっぱり世界一の美女はドヌーブですよ」。たしかに、名声の高さから言えばドヌーブが遙かに上である。おっと、ここでヴィヴィアンと比較するのは失礼にもほどがあるね。
プロフィール。中学時代から映画一筋の生活を続け、ロジェ・バディム、トリュフォーら名高い監督の作品に出演、とにかく出る映画はすべて傑作揃いだ。今まで彼女が業界でやってきたこともとんでもないことばかりだし(あげれば切りがないのでここでは書かない)、演技派としても世界一の実力派といわれる国際的ビッグ・スターである。もちろん現在も第一線で活躍中。妖しい美貌は衰えることはない。大袈裟だが、映画の歴史はドヌーブの歴史である。
日本での人気はミュージカル「シェルブールの雨傘」(64)がきっかけだと思う。ダイナミックなハリウッド製ミュージカルとはまったく違うメランコリーなアプローチがヒット。あの有名な音楽以上に、ドヌーブの美貌が作品を支えていた。ただし、ドヌーブのセリフはすべて吹き替えで、彼女の生の声を聞くことができなかったのは今思うと残念である。
続くは「反溌」(65)。彼女が演じた役は、セックスに嫌悪感を抱く少女。しだいに狂っていく役で、可愛い顔して恐ろしかった。ここからドヌーヴは女性の心の奥の愛憎・欲望などを表情・物腰だけで体現することを得意とし、性格女優を兼ね備えた希有の美形スターとして、女優人生をばく進していくことになる。実に幸運なスタートであった。
60年代後期は彼女のキャリアの中でももっとも傑作に恵まれた時期であり、彼女の人気がアメリカでも高まってきた頃だ。「世界最高の美女」という肩書きがついたのもその頃。あの濃厚な二重まぶたが男の視線を吸い込んでしまうのである。ドヌーブは退廃・背徳・官能といった言葉の似合う魔性の美女として、異才ブニュエルの「昼顔」(66)、「哀しみのトリスターナ」(70)などに出演(ブニュエルとの出会いを抜きにしてドヌーブの映画は語れない)。
ドヌーブを見ていると、ただただフランス女優の強さというのを思い知らされるばかりである。ドヌーブの役柄が負のイメージだからだろうか?
性格型の役を演じ続けてきたドヌーブは、まさに映画女優らしき映画女優であった。彼女は、フランス女優、そして全世界の映画女優の象徴である。ちょっと褒めすぎ?
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